「豊胸」をイメージさせるようなクッキーなどの日本製健康食品が出回り、海外でも問題になるケースが出ている。タイでは、保健省が調査に入ったという。薬事法違反に問われかねないため、発売元では「豊胸になる」をうたってはいない。が、内外の一部販売業者に、過剰な宣伝が見られるようだ。
発売元「バストアップするとは考えていません」
クッキーを宣伝している通販サイト
「F・cup cookie」。こう書かれたクッキーのパッケージには、ふくよかな女性のバストが強調された写真があしらわれている。
日本製のこのクッキーは、ネット時代を反映して、海外にも出回っている。美乳効果があるとも言われるマメ科の植物「プエラリア・ミリフィカ」が含まれているのが特徴だ。プエラリアは、タイ北部が原産地とされる。ところが、そのタイで、このクッキーの販売が問題になっているというのだ。
時事通信の2009年1月20日付記事によると、一部の業者がネット上で「食べると胸が大きくなる」と宣伝して、タイ人女性の間で人気になった。ところが、タイではプエラリアは医薬品扱いになっており、保健省が「女性ホルモンに影響を及ぼす」と注意を呼びかけ、実態調査に乗り出した。
日本では、プエラリアは医薬品扱いになっていない。このため、クッキーやお茶、サプリメントなどの食品に広く使われている。とはいえ、前出のクッキーは、「豊胸」といった医薬品的効果があるように誤解させかねない名前やパッケージになっている。
また、ある通販業者のサイトには、もっと過剰な宣伝がみられる。「ついに!豊乳時代突入」の大見出しで、「トップが膨らみ、アンダー締まる だから成長2倍速!!」などとうたっているのだ。
クッキー発売元のヨコヤマコーポレーション(群馬県)では、こう説明する。
「弊社としては、バストアップするとは考えていません。女性らしく食べるかわいさアップのおやつということです。『F・cup』という表記は、商品名なので意味はありません。出荷量が多くて、通販業者などがどういう売り方をしているかは分かりません。販売できないタイには輸出しておらず、どういう経路か不明ですが、クッキーが転売されていたようです」
同社では、これまでに、F・cupシリーズ商品で累計250万個以上を売り上げたとしている。
効果があったとしても、副作用の危険
プエラリアは、医薬品的な効果をうたえば、薬事法違反になる。実際、それを含む健康食品を無許可で販売していた化粧品販売業者が1999年11月に神奈川県警に逮捕されるなど、過去にいくつかの摘発例がある。このケースでは、「飲むだけでバストが大きくなる」などと豊胸効果をうたっていた。
ただ、医薬品扱いではないことが、かえって消費者を分かりにくくさせている面があるようだ。兵庫県の業者は「豊胸効果がある」などとプエラリアを含んだ加工食品を売り出し、県から薬事法に抵触するとして2001年10月に文書で指導を受けた。その後は、改めたものの、現在も販売サイト上で、女性ホルモンのバランスを崩しがちな女性を強力にサポートする、などと「効果」を臭わせるような表現で食品をPRしている。
なぜ、プエラリアは医薬品扱いではないのか。
国立健康・栄養研究所のサイトによると、その効果については、更年期症状の緩和を示唆する報告があるだけで、十分な情報は見当たらないとある。つまり医薬品として承認するまで研究が進んでいないということだ。
とすると、やはり「豊胸」の効果がないということか。
同研究所の研究員は、「女性ホルモンに似た作用をする成分が含まれているのは事実で、その成分を多く摂取すれば効果があるかもしれません。まだ分かっていないことが多いんですよ」と話す。
とはいえ、食品にかなりの量の成分が含まれていれば、効果があったとしても、逆に副作用の危険があるとする。「濃縮物なら、化学物質と捉えるべきです。女性ホルモンのバランスが崩れると、乳がん、子宮がんになることもあります。実際に、プエラリアを摂取して、肝機能障害や貧血が起きたという報告があります。健康被害に注意した方がいいですね」