「派遣切り」に続いて、新卒学生の採用内定を取り消す「内定切り」が問題化するなか、選考を通過して最終面接までこぎ着けたのに、「採用計画が変わった」として「最終面接中止」を言い渡す外資製薬企業もあらわれた。採用予定人数をしぼって採用計画を発表する企業は少なくないが、一度始まった選考作業を途中で打ち切るのは異例だ。採用環境が急激に悪化していることを浮き彫りにした出来事だ。
最終面接に残れば、半分は内定をもらえる
選考作業の打ち切りが明らかになったのは、仏大手製薬会社「サノフィ・アベンティス」日本法人(東京都新宿区)。サノフィ・アベンティスは04年、仏製薬大手サノフィ・サンテラボが、同アベンティスを買収して誕生。調査会社のユート・ブレーンの調べによると、07年度に同社が全世界で売り上げた医薬品の額は434億ドルにのぼり、米ファイザー社(444億ドル)に次いで、世界第2位という規模だ。全世界の従業員数は約10万人で、日本法人では約3000人の社員を抱える。
突然の採用停止が決まったのは、臨床開発職。製薬会社ではMR(営業)職など複数の業種が存在するが、その中でも開発職は「花形」とされる。J-CASTニュースの調べでは、例年は2500~3000人の応募者の中から、4~5人程度しか採用されない「狭き門」。もっとも、同社では「採用人数は非公表」とコメントしている。さらに、2006年4月~08年4月の3年間は、新卒入社自体がなかった。09年4月には4人が入社するとみられ、現在行われている採用活動は、2010年4月に採用予定の「復活2年目」。筆記試験や面接など選考作業が進み、少なくとも8人に、最終面接の案内が行われたとみられる。
ところが、同社コミュニケーション部の説明によると、採用面接2日前の09年1月20日になって、「医療費の抑制など、急激な外部環境の変化が起こった」として、開発職の新卒採用の中止が決定。同日、応募者に対して、電話で「最終面接中止」が連絡されたという。 同社のある社員によれは、採用があった過去数年の開発職の最終面接には10人程度が呼ばれ、倍率は2倍程度。つまり「半分は内定している」とも言える状況で、学生にとってはショックが大きい。