「ザ・リッツ・カールトン東京」「ザ・ペニンシュラ東京」といった外資系高級ホテルの宿泊料金「安売り」が始まった。米国発金融危機の影響で、利用者の多くを占める海外法人客が減っていることが、背景にありそうだ。このクラス以下のホテルとなると、「たたき売り」状態になっている。
空き状況によって価格が直前にぐっと下がる
都内では、2007年には「ザ・リッツ・カールトン東京」(港区)や「ザ・ペニンシュラ東京」(千代田区)が相次いで開業した。09年3月には東京・丸の内に香港系の「シャングリ・ラホテル東京」がオープンする。
こうした超高級ホテルは1泊料金が最低6万円台で、値下げされることはめったにないが、ネットではこうした高級ホテルの「安売り」が盛んになっている。
予約サイト「一休.com」をみると、「マンダリンオリエンタルホテル東京」の場合、デラックスツインの正規料金2人で8万850円が、同サイトでは「初夢おみくじプラン」として5万円に値下げしている(09年1月末まで)。「フォーシーズンズホテル椿山荘」(東京都文京区)では、「スーペリアルーム ツイン シティビュー」(45平米)に泊まれて、スパの入場券込みで2人3万5000円(2月27日まで)。通常は宿泊代だけでも7万1925円する。
価格比較サイトを運営するカカクコムは、高級ホテル・旅館予約サイト「yoyaQ.com」を運営している。横浜みなとみらい地区で一際目立つ帆型をした「ヨコハマ グランド インターコンチネンタル ホテル」は最大割引86%オフで、1室あたりの最安料金は1万2000円(1~2月)、「ホテルニューオータニ」(東京都千代田区)は最大割引61%オフで、最安料金1万6000円(同月)となっている。
JTBもウェブサイト「JTBプレミアム」で、高級ホテルの宿泊プランを割安に販売している。広報担当者によると、働く女性の間で自分へのご褒美として、高級ホテルに泊まってエステが受けられる2万円台~3万円台のプランが人気だ。「空き状況によってはホテルが提示する価格が直前にぐっと下がることもある」そうだ。
外資系高級ホテルは海外法人の社員が出張時に利用することが多いが、米国発金融危機の影響で、大きく減っているという。
日本政府観光局(JNTO)によると08年11月の訪日外国人数は前年同月比19.3%減の55万4000人で、8月以降4か月連続でのマイナスとなった。中国や香港からの訪日数は増えているが、シンガポール、フランス、韓国、台湾、タイ、オーストラリア、アメリカ、イギリス、ドイツは軒並み減った。金融危機による景気後退に加え、韓国ウォンや豪ドルなどの通貨に対する円高が進んだことも要因とみている。
「コンラッド東京」(東京都港区)マーケティングコミュニケーション部の担当者は、こう明かす。
「海外法人の獲得が厳しくなっています。企業側も契約決定を先送りにするケースが増えており、先が見えない状況です。また業界で価格競争が起こっており、単価を下げて契約せざるを得ないこともあります。そうなれば稼働率は保てても、売上げでみると前年を下回ってしまいます」
日本人マーケットをどう取り込むかが課題
「前年に比べて稼働率が良くない」というのは、東京・丸の内のオフィス街に構える「フォーシーズンズホテル丸の内」。
「金融危機や世界的な景気悪化により、海外からのお客様が減っているように感じています」(広報担当者)
「ファクタ」2009年2月号の「憧れのセレブホテルが『死屍累々』」と題する記事には、東京都内主要ホテルの収益力ランキングが載っており、どこも苦戦している様子が報じられている。同誌は独自に1室あたりの収益力(客室単価×客室稼働率、08年11月時点)を算出。前年同月に比べて収益力の落ち込みがもっとも激しいのは、マンダリン・オリエンタル東京(中央区)。続いて、パークハイアット東京(新宿区)、グランドハイアット東京(港区)となっている。
前出の「フォーシーズンズホテル丸の内」広報担当者は、
「稼働率がよかった2007年に比べれば、若干安くなっています。しかし過度な値下げはブランドイメージに影響しますので、当社グループで決められている一定価格より下げることは考えていません。また、業界でもマーケットはいずれ回復するとみられており、今下げすぎてしまえば(回復した時に)値上げできなくなります」
と話している。
また、「コンラッド東京」広報担当者は、「あくまで安売りはせずに、食事やスパといったオプションをつけたお得なパッケージを増やしています」とし、いずれも正規価格の値下げには慎重の構えだ。