1998年末に旧日本債券信用銀行が経営破綻してから10年が経過した。受け皿となったあおぞら銀行だが、2009年3月期決算は初の最終(当期)赤字に転落する見通しと業績は低迷している。大株主の米投資会社、サーベラス・キャピタル・マネジメントによる「機関銀行化」もささやかれ、公的資金返済も含めた再建の展望は開けていない。
主要行で唯一、最終赤字になる見通し
あおぞら銀は2000年、ソフトバンクなど国内勢の3社連合を受け皿に発足。2003年にはサーベラスの傘下に入ったが、収益はひとまず順調に回復して、2006年には東京証券取引所に再上場し、復活の兆しをつかんだかに見えた。しかし、金融危機に直撃され、2009年3月期は主要行で唯一、最終赤字になる見通しを明らかにしている。
痛手となったのは海外向け投資の損失拡大。旧長信銀のため、国内の営業基盤はぜい弱で、融資残高は地銀上位行並みしかなく、海外投資に活路を求めてきた。だが、米リーマン・ブラザーズ向け融資や米ゼネラル・モーターズ(GM)の関連金融会社GMAC向け投資などの損失は計910億円に達した。米ナスダックの元会長、バーナード・マドフ容疑者が運営するヘッジファンドでの巨額詐欺事件関連の投資残高が124億円(損失額は未定)あった。
金融業界では「あおぞら銀の海外投資を主導したのはサーベラス」との観測も根強い。「金融危機でファンド勢の懐が苦しくなった。あおぞら銀が関係のなかったGMACに出資したのも、サーベラスに付き合わされたのでは」(金融筋)と、サーベラスの"機関銀行化"を疑うような、うがった観測さえ流れるほどだ。
「売りに出されても、魅力はない」と冷ややかな見方
さらに、金融危機が深刻化するにつれ、「サーベラスは投資回収のため、あおぞら銀の売却を急ぐのではないか」との憶測が飛び交った。サーベラスはGMACに加え、米クライスラーにも出資している。「米自動車業界の極度の不振がサーベラスを襲い、あおぞら銀も手放さざるを得なくなる」との見方が広がったためだ。
サーベラスは売却観測を否定しているが、「仮にあおぞら銀が売りに出されても、魅力はない」(邦銀首脳)と冷ややかに受け止める向きが多い。旧日債銀と同じ1998年に破綻した旧日本長期信用銀行を引き継いだ新生銀行も業績は振るわないが、消費者金融大手レイクを買収するなどノンバンク路線で生き残りを目指しているのに対し、あおぞら銀は将来戦略が描けていないからだ。
あおぞら銀は08年2月、元農林中央金庫の著名ファンドマネージャーで、鳴り物入りで最高経営責任者(CEO)に迎えた能見公一氏を更迭。後任に据えたフェデリコ・サカサCEO兼社長も今春限りでの退任を示唆している。首脳がくるくると代わり、経営方針が一貫していない「迷走」ぶりも市場の不興を買い、株価は低空飛行。株価が回復しない限り、公的資金の返済にもめどが立たないのが実情だ。