不況の波は大学受験を控えた高校生にまで押し寄せている。1校あたり平均3万5000円の私立大受験料を節約するために出願数を減らしたり、センター試験を利用して一般入試よりも安く受験したりするケースが増えている。お金の負担が少ない推薦入学を選んだり、大学への進学を見直す生徒もおり、事態は深刻のようだ。
今年の受験は「安近少」
大手予備校の河合塾が全国の高校教員1774人に行ったアンケート結果から、景気悪化が大学受験に影響を及ぼしていることがわかった。約7割の教員が「大きく影響している」「やや影響している」と答えており、具体的には「奨学金の活用を考える生徒が増えている」63.6%、「通学可能な範囲の大学を選ぶ志向が高まっている」54.0%、「学費の安い国公立大志向が高まっている」44.5%となっている。
私立大の場合、平均3万5000円する受験料も大きな出費で、「私立大の受験校数を減らす傾向が高まっている」という回答は39.8%にのぼった。河合塾は今年の傾向について、学費・受験費用が安く、自宅から通える近場にあり、出願数を減らす、という意味から、「安近少」と分析する。
また自由回答欄には、「受験料の負担を考えて推薦入試で決めてしまう」「推薦・AO入試で合格すると入学金・授業料が減免されるという理由で選択している」という意見もあり、金銭面からランクを下げて推薦を選ぶ生徒もいるようだ。中には「大学への進学自体を見直す生徒が出てきている」(13.7%)という回答もあり、深刻さがうかがえる。調査は2008年11月28日から12月16日までに全国35の会場で行った入試動向説明会で実施した。
大手の駿台予備校でも影響が出ている。田村明宏広報課長はこう語る。
「昨年の私立大の平均併願数は文系が7校、理系は5校ですが、今年は感触としては減っていると思います。中には3校に減らさないとならない、という生徒もいました。また、8割の私立大でセンター試験を利用する受験方法をとっており、この場合は一般受験よりも受験料が安くなります。出願数は減らさずに、センター利用で私立を併願するケースが増えているようです」
たくさん受けるならセンター利用の方が安く済む
センター試験を利用した受験制度は、早稲田大学、慶応大学、青山学院大学などが導入している。一般受験の平均受験料は3万5000円だが、センター利用は1万5000円から2万円が多い。センター試験の受験料(3教科以上1万8000円、2教科以上1万2000円)は別途かかるものの、たくさん受けるならセンター利用の方が安く済む。
大学入試センターによると、09年のセンター試験志願者は前年を596人上回る54万3981人で、浪人生は減ったが、現役の高校生はおよそ3250人増えた(1月9日時点)。09年春に卒業見込みの高校生のうち過去最高となる約40%を占め、センター利用で私立を受ける学生が増えていると推測できる。
また、1月中旬にセンター試験が終わると、国公立を目指していた学生が私立に替えて出願する例が多いが、田村課長は「今年は何としても国公立に入ろうと後期まで粘っている感じもする」と指摘する。
一方、現役高校生を対象に関東を中心に展開する予備校、市進予備校では様子が異なるようだ。広報宣伝担当者はこう話す。
「受験費用についても、冬のボーナスが出なかったとか深刻なケースを除いては、出願数を減らすことは考えにくいです。むしろ、来年の受験に影響が出てくるんじゃないでしょうか」
今年大学受験をする子供がいるという会社員の男性は、私立は8校に出願したという。
「今日、ほとんど振り込んできましたが、全部で35万円近くにもなりびっくりしました。1度落ちても再チャレンジができる学校もあり、その都度受験料がかかるのですが、うまくお金を取れる仕組みになっていますね。そうは言っても、万が一すべて落ちて浪人されると、予備校に通わせるお金がかかってしまう。なので、出願は減らしませんでした」
ともらしている。