超高級携帯電話「VERTU(ヴァーチュ)」が日本に上陸する。高級素材のみを使い、専門の職人が手作業で組み立てた端末だ。さらに、専門のコンシェルジュが、レストランやホテルの予約をしてくれる、という贅沢なサービスまで付いている。価格はなんと370万円! フツーの人にはなかなか手に入らなそうなケータイだが、いったいどこがすごいのか?
年収5000万円以上の男性がメインターゲットになる?
高級携帯電話VERTUの「Signature」モデル
ノキア傘下の携帯製造・販売Vertuは2009年2月19日、東京・銀座に同社直営店「Vertu銀座フラッグシップストア」をオープンする。NTTドコモの回線を利用したMVNO(仮想移動体通信事業者)として、携帯電話事業に参入する。同社はこれまで「VERTU」ブランドの携帯端末を世界約50か国で展開しているが、販売台数は公表していない。
ヴァーチュの携帯電話は、英国の専門工場で、職人が1台1台手作業で組み立てられているという。同社の説明によれば、日本でも発売される「Signature(シグネチャー)」モデルは、2000度の溶鉱炉で2週間以上かけて精製したサファイヤクリスタルをディスプレイに使用。また18Kゴールドを使用した本体には、貴金属の品位を証明するスイス・アッセイ・オフィスの認証刻印が施されている。電子機器として初の付与だという。
また、着信音やアラートは、アカデミー音楽賞を受賞した有名作曲家マリオ・ダイネッリがVERTUのために作ったものだという。演奏はロンドン交響楽団、フルートのソロパートは、世界的なフルート奏者アンドレア・グリミネッリが演奏するという徹底ぶりだ。
「シグネチャー」モデルはステンレススチール、イエローゴールド、ホワイトゴールド、プラチナの4タイプの展開で、販売価格は121~370万円になる予定。プラチナモデルの価格は未定となっている。日本では、「シグネチャー」のほかに、カメラを搭載し、スポーツカーのエンジンに使われるチタンを端末本体に使った「Ascent Ti(アセント・ティー・アイ)」が発売される。こちらの販売価格は67~110万円となる予定だ。
同社はこれらの携帯電話端末について、
「世界の携帯電話保有台数が数十億に上るなか、Vertuがターゲットとするのは高級品嗜好を持つユーザーです」
と「富裕層向け」商品であることを前面に出す。一部では年収5000万円以上の男性がメインターゲットになるとの報道もある。
コンシェルジュに24時間電話がつながる
携帯電話に詳しいジャーナリストの松村太郎さんはヴァーチュについて、
「今まで日本の携帯電話は、皆が同じようなクラスで同じサービスを使うというもので、ラグジュアリーなものは欲しくてもなかった。限られた人が買うことになるだろうが、ユーザー規模の問題ではなく、今までのものとは比較できない商品だ」
と話しており、「皆がカローラに乗っていた状態に、いきなりマイバッハ(ダイムラー・クライスラー社の最上級高級車)が来る感じ」とも評する。
VERTUケータイの最大の売り物は、「コンシェルジュサービス」というサービスだ。携帯電話端末の側面には「コンシェルジュキー」というボタンがあり、ワンプッシュでヴァーチュ専門のコンシェルジュ(案内人)に24時間電話がつながる。利用客のリクエストに応え、レストランやホテルの予約などを行ってくれるというものだ。
同社ではこれまでに、約2万2000件の一流レストラン、約8000件のホテル、約5000件のフライトの予約を請け負ったほか、象1頭の調達を行ったという。同社ホームページでは、コンシェルジュが利用客の「記念日に妻に宝飾品を贈りたい」という要望に対し、妻の嗜好などに合わせて、世界の宝石店からパリの高級宝飾店ブシュロンを選び、ネックレスを取り寄せた、というエピソードを紹介している。
日本でどのような「コンシェルジュサービス」が展開されるかどうかはまだ公表されていないが、日本人向けの専門スタッフが対応する見通し。前出の松村さんは、「従来の携帯電話でも検索してお店を探すことはできるが、人にお願いするのは確実で効率が高い。一番リッチで使いやすいサービス」と話しており、「今までになかった携帯電話のサービス」がこれからの携帯電話サービスに何らかの影響を与えるのではないか、と見ている。