金総書記後継者と報道 3男正雲とはどんな人間か

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   北朝鮮の金正日総書記の体調問題に端を発した「お世継ぎレース」が、新たな展開を迎えている。韓国を代表する通信社が、消息筋の話として、「金総書記が、後継者として3男の正雲(ジョンウン)氏を指名した」と報じているのだ。金正日総書記の「元・専属料理人」が、正雲氏を「本当にリーダーシップがある人で、当然ではないか」とする一方、専門家からは「長男、次男を一足飛びにして『いきなり3男』というのは、儒教の国としては不自然」と、懐疑的な声も聞こえてくる。

「本当にリーダーシップがある人だと思いました」

   韓国の聯合ニュースが2009年1月15日、消息筋の話として伝えたところによると、金総書記は1月8日ごろ、「正雲氏を後継者に決めた」旨の決定を盛り込んだ通知を労働党組織指導部に対して出したのだという。

   同ニュースによると、正雲氏は1990年代にスイス・ベルンのインターナショナルスクールを卒業。帰国後は、金日成軍事総合大学で「主体の領軍術」を中心に学んだという。

   「お世継ぎレース」をめぐっては、これまでに候補として取りざたされていたのは、長男の正男(ジョンナム)氏(37)と次男の正哲(ジョンチョル)氏(28)。

   ただし、正男氏については、北京空港の待合室で居合わせた日本人男性から後継者問題について聞かれると「いいえ、僕ははやりたくありません」と答えたとされる(「アエラ」08年10月13日号)。それ以外にも、「お世継ぎ」には消極的な発言をしていることが、複数のメディアで報じられている。正哲氏については健康問題を指摘する声もあるほか、労働党の内部でも「正男派」と「正哲派」に分かれて派閥争いが行われている、という観測もある。状況は混沌としている、というのが現状だ。

   そんな中で、突然浮上した「正雲説」。関係者の間でも、評価は割れている。

   例えば、金総書記の「専属料理人」だったとされる藤本健二氏は、09年1月16日、テレビ朝日の情報番組「ワイドスクランブル」に生出演。藤本氏は金総書記が正雲氏を評価する発言を何度もしていたとして、以前から「正雲氏本命説」を唱えている。7歳から18歳の頃までの彼を見てきた体験から、

「正雲氏は、正哲氏とチームに分かれて、バスケットボールの試合をすることがあったのですが、兄王子(正哲氏)は、試合が終わると『ご苦労さん』と言って、すぐ解散してしまう。ところが弟王子(正雲氏)は、必ずといってもいいほどミーティング(反省会が)がある。そして、(チームメンバーを)名指しして、理にかなったことを言う。本当にリーダーシップがある人だと思いました」

と、正雲氏を絶賛。今回の「後継者決定」報道にも納得の様子だ。

   藤本氏によると、がっちりしていて体型も金総書記によく似ているそうだ。

本当であれば早い段階で朝鮮総連に情報が伝達される

   一方、コリア・レポートの辺真一編集長は、懐疑的な見方だ。

「ちょっと、聯合ニュースが『飛ばし』過ぎた面があるように思います。韓国政府も事実を確認できていないし、そもそも情報源が定かではない。韓国メディアに、北朝鮮の1週間前のトップシークレットを把握できるほどの能力があるとは思えない」

   さらに辺氏は、「いきなり3男を指名した」という点を不自然に感じている様子だ。

「儒教の文化からすると、長男・次男を一足飛びにして『いきなり3男』というのは、いかにも不自然です。正男氏はピンピンしているし、健康問題が指摘されている正哲氏も、ドイツまでエリック・クラプトンのコンサートを見に行く様子が、フジテレビにスクープされている。なんだかんだ言って、元気なはずです」

   また、週刊現代が08年9月、「正雲氏は交通事故で植物状態になった」と報じているが、辺氏は、この報道にも否定的な様子だ。

   一方、「この報道を無視・軽視できないのも事実」とも話す。仮に報道が正しいとすれば、その背景は、やはり金総書記の健康問題にあるのだという

「金総書記が08年8月に倒れたというのは、ほぼ間違いありません。その後に公開された写真も、体の不自由さを感じさせるものです。『自分の目で判断できるうちに(後継を指名しておこう)』との考えが働いた可能性もあります」

   現段階では、今回報道の「真実度」は不明なままだが、辺氏は、今後の展開については、朝鮮総連を注目すべきだ、と指摘する。

「仮に報道内容が本当であれば、労働党から早い段階で朝鮮総連に情報が伝達されます。そこから、必ず情報は漏れてくるはずです」
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