日本テレビのプロデューサーが番組ブログで、会社がドラマに冷たいと愚痴を漏らして話題になっている。不況余波などで、制作に金がかかるドラマが次々に削られているなどの現状を嘆いたらしい。一体どうなっているのか。
ドラマに冷たい会社の体質、赤字で強まる?
異例の「グチ」が載った番組スタッフブログ
自局への批判とも取れる内容が、なんと自局の番組スタッフブログにエントリーされていた(現在は削除)。
これを書いたのは、2009年1月17日に始まる日本テレビのドラマ「銭ゲバ」の河野英裕プロデューサー。13日付日記では、「グチ」と題して、ドラマの制作発表後に、自局の生番組で朝の「ズームイン」以外は取り上げられなかったとして、こう書き込んだ。
「そうか、そんなにどうでもいいことなのか、と。宣伝部やらなんやらの力ではいかんともしがたいことならば、いったいどうすればいいのだろう」
河野プロデューサーは、ドラマに冷たい会社の体質が赤字になってから強まっていることを示唆し、日記で「自局の芸能ネタを少しでも扱う余裕すらこの局にはなくなっている」と明かした。
コストカットとみられる「ものすごい逆風の中」で、「どうすればいいのだろう」とも告白。ビクビクしないといけないなら、テレビ局を「サイズダウンすればいい」として、「高層ビルの中でテレビ作る必要ないじゃないか。地ベタで生きるほうがかっこいいし、すっきりする」と指摘していた。
俳優の松山ケンイチさん主演の新ドラマ「銭ゲバ」は、週刊少年サンデーで1970~71年に連載されたジョージ秋山さんの同名漫画が原作。極度の貧困に育ち、金のためなら手段を選ばない主人公を描いている。ブログでは、主人公は一方で美しいものや真実を追い求めているとしており、「地ベタで生きる」という表現で主人公とダブらせてみたのかもしれない。
河野プロデューサーは、03年夏放送のドラマ「すいか」を制作し、視聴率が伸び悩んだものの内容が評価されて、向田邦子賞やギャラクシー賞優秀賞を受けている。その後も、「野ブタ。をプロデュース」「マイ☆ボス マイ☆ヒーロー」などを次々に手がけている。
「もはや、連続ドラマは、地上波の娯楽として主流ではない」
河野英裕プロデューサーの愚痴には、日本テレビの特殊な事情があるかもしれない。しかし、テレビドラマ制作の現場がお寒い状況になっているとすれば、それはテレビ局だけの問題なのか。
放送評論家の松尾羊一さんは、ドラマ冷遇の背景に、視聴者側のテレビ離れがあると指摘する。
「お茶の間で、1週間に1回ペースのドラマを鑑賞する習慣は、ここ5、6年でなくなってきてしまいました。若い人向けに漫画原作のドラマも増え、視聴者が世代別に分かれてしまっています。また、テレビは、バラエティなど場当たり的な面白さを楽しむ程度の存在になっています。今は、映画もありますし、ケータイの楽しみもあるからです。もはや、連続ドラマは、地上波の娯楽として主流ではないのですよ」
ベテランプロデューサーが、ドラマを制作しても手応えがなくなっているのは、そんな理由があるというのだ。松尾さんは、ドラマを作る者と見る者の関係性が薄くなっているとして、「漫画を利用して終わりといったように、ドラマはほとんど使い捨てになっている」とも指摘する。
では、ドラマ復活のためには、どうしたらいいのか。
松尾さんは、河野プロデューサーのテレビ局サイズダウンではないが、何らかの形でコストを捻出しないと、いいドラマはできないと指摘する。
「ドラマは、もともとコスト産業なんです。音楽やセット、ロケ、役者をそろえなければならない総合芸術なので、コストがかかるんですよ」
その上で、「視聴者に思いがストレートに伝わるような演技や企画は何か、これから考えていかなければなりません。テレビ局側もしっかりしないとダメですね」と指摘している。