「もはや、連続ドラマは、地上波の娯楽として主流ではない」
河野英裕プロデューサーの愚痴には、日本テレビの特殊な事情があるかもしれない。しかし、テレビドラマ制作の現場がお寒い状況になっているとすれば、それはテレビ局だけの問題なのか。
放送評論家の松尾羊一さんは、ドラマ冷遇の背景に、視聴者側のテレビ離れがあると指摘する。
「お茶の間で、1週間に1回ペースのドラマを鑑賞する習慣は、ここ5、6年でなくなってきてしまいました。若い人向けに漫画原作のドラマも増え、視聴者が世代別に分かれてしまっています。また、テレビは、バラエティなど場当たり的な面白さを楽しむ程度の存在になっています。今は、映画もありますし、ケータイの楽しみもあるからです。もはや、連続ドラマは、地上波の娯楽として主流ではないのですよ」
ベテランプロデューサーが、ドラマを制作しても手応えがなくなっているのは、そんな理由があるというのだ。松尾さんは、ドラマを作る者と見る者の関係性が薄くなっているとして、「漫画を利用して終わりといったように、ドラマはほとんど使い捨てになっている」とも指摘する。
では、ドラマ復活のためには、どうしたらいいのか。
松尾さんは、河野プロデューサーのテレビ局サイズダウンではないが、何らかの形でコストを捻出しないと、いいドラマはできないと指摘する。
「ドラマは、もともとコスト産業なんです。音楽やセット、ロケ、役者をそろえなければならない総合芸術なので、コストがかかるんですよ」
その上で、「視聴者に思いがストレートに伝わるような演技や企画は何か、これから考えていかなければなりません。テレビ局側もしっかりしないとダメですね」と指摘している。