「企業の説明会に行っても採用人数を教えてもらえない」――大学3年生たちは今、就職活動に不安を募らせている。景気悪化の影響で、就職説明会は開かれても、経営方針が決まらないため、採用人数が現在に至っても公表できないようなのだ。不況の深刻化がここにも表れた形だ。
「採用人数、今年は出さないところが多い」
採用人数「非公開」で就活生の不安も募る
大学3年生のAさん(男性)は、大手自動車と金融の説明会に出席したが、いずれの企業からも採用人数が具体的に示されることはなかった。
「(企業側は)去年より増えることはない、というだけ。今年は非常に厳しいのではないか」
と不安を口にする。広告系の企業を志望している、同じ大学3年生のBさん(女性)は、「100人単位で採用していた企業も数十人まで減らしていたりする。(採用人数を)公表していない企業もあって、実際に採用があるのかどうか分からない」と漏らす。就職活動している学生にとっては「先の見えない」不安感が募る。
駒澤大学キャリアセンターの担当者は、
「採用人数は(企業の)大手、中小問わず、今年は本当に出さないところが多い。企業に聞いてみても歯切れが悪いですね」
と明かす。就職説明会はやるのだけれど、経営方針の先行きが見えないため、採用人数が現在に至っても公表できない、そんな企業も多いようだ。
「ソニーショック」で企業の態度も変わってきた
リクルートが民間企業を対象に08年10月16日~11月12日に実施した調査では、2010年卒の大学生・大学院生の新卒採用見通しについて、「増える」とした企業は前年より9.7ポイント減の8.3%で、「減る」としたのは同比8.9ポイント増の15.7%だった。また、「わからない」とする企業も前年比5.2ポイント増の25.1%だった。08年に比べると就職活動が厳しくなりそうだが、その後も就活生をめぐる環境は厳しさを増す。
人材業界では、08年12月9日にソニーが正規社員約8000人を含めた計1万6000人を削減する大リストラ計画を発表した「ソニーショック」の前と後で、「企業の態度も変わってきたのでは」と指摘する声もある。
エン・ジャパンが2008年12月9日~15日に、民間企業499社を対象に行った調査では、新卒採用を「50人以上」としていた企業は08年10月時点では11.8%だったのに対し、12月では8.4%にまで減った。逆に「5人未満」とする企業は、10月時点では18.2%だったのが、25.5%にまで増えた。エン・ジャパンの広報担当者は、「情勢を見て、考え方を変える企業も出てきたようだ」と話している。