病院で医師や看護師に暴力や暴言をふるう「モンスターぺイシェント」(怪物患者)が全国的に急増し、社会問題化している。ほぼ毎日のように暴行・暴言が起こり、職員の心身が持たない状態に追い込まれている病院すらある。対策として元警察職員を雇ったり、監視カメラを設置したりする例も出てきた。
「医者一人では足りないからもう一人呼べ!」
些細なやりとりから医師に対してクレームを付けるのは代表的な例だ。
「診療結果が正しいかどうか、お前が責任取れるのか!」
「医者一人では足りないからもう一人呼べ!」
「日本の医療制度は変だ。納得いくまで診療代は払わない!」
怪我で縫合手術をした後に化膿止めの抗生物質を処方すると、
「こんな薬を出せと頼んだ覚えはない!」
などと威圧するなど、無理難題に近いクレームが多い。
こんな時、必ず口にするのが「(厚生労働省などに)訴えるぞ!」といった言葉なのだそうだ。また、患者以外のトラブルも増えていて、入院中の母親を見舞いに来た男がその母親と喧嘩。看護師が止めに入ったのだが、止めに入ったことに腹を立て男が看護師に暴行、全治2週間のケガを負わせるという事件も2008年11月に大阪で起こった。酒に酔って来院、それに伴うトラブルも多く、徳島県では、酔った患者が病院で暴れ灰皿で職員を殴り大ケガをさせる、ということもあったという。
全日本病院協会が08年4月に公表した調査によれば、回答のあった全国1106の病院で、「過去1 年間で職員に対する院内暴力(身体的暴力・精神的暴力)があった」のが52.1%。発生件数は6882件。職員に対する院内暴力・暴言が起こる不安を持っている病院は60.7%だった。同協会では、
「職員が安全な環境で働くための院内整備をおこなうことが重要な課題のひとつ」
と全国の病院に呼びかけている。
対策を立てなければ職員の心身が持たない
これを受けて、全国の病院では「モンスターぺイシェント」の対策が始まっている。職員に向けた対応マニュアルを作成するほか、元警察職員の雇用、監視カメラの設置を行っている病院もある。徳島県にある阿南共栄病院では、08年12月15日に県警組織犯罪対策課の捜査員を招き講習会を実施。医師や看護師約150人が出席したこの講習会で、捜査員が「モンスターペイシェント」を演じ、患者の暴行、暴言による不当要求の対応についてアドバイスをした。
同病院はJ-CASTニュースに対し、患者の暴行や暴言は過去からあったものの、現在はほぼ毎日のように起こっているという。しっかりとした対策を立てなければ職員の心身が持たない状態だ、とも打ち明ける。なぜこうした患者が増えてしまったのかについては、
「お年を召した方よりは若い人に多くみられます。現代の風潮といいますか、自己中心タイプの人が医療をサービス業と同じものだと考え、言った者勝ち、無理でもゴリ押しすれば通ると・・・。それがエスカレートし暴言、暴力にまで行ってしまうのではないでしょうか」
と話している。同病院では09年1月中に対処法をまとめたマニュアルを策定し、職員に配布する予定になっている。