車の運転中にガムを噛むと頭がスッキリするなどといわれているが、ガムを噛むと脳の働きが活性化することが自然科学研究機構生理学研究所の研究でわかった。ガム1枚を噛む回数は550回にものぼり、そば15回、チャーハン47回(各10グラムあたり)と比べてもダントツで多いのだそうだ。
脳の働きが短期的に活発になる
大学共同利用機関法人の自然科学研究機構生理学研究所(愛知県岡崎市)の柿木隆介教授と坂本貴和子研究員は、特殊な脳波の測定により、ガムを噛むと脳の働きが活性化されるという研究結果をまとめた。「国際臨床神経生理学会誌」に2008年11月19日に掲載された。
被験者に5分間、無味無臭のチューインガムを噛んでもらい、その直後に音による刺激を用いて特殊な脳波「P300」を測定。P300は何らかの刺激が与えられてから0.3秒後に出現する反応で、脳が活性化すると反応時間が短くなる。
これを3回繰り返し、ボタン押しによる反応時間も計測した。また、(1)何もしない(2)噛むのと同じような顎の運動はするが、実際には噛まない(3)手指の運動(タッピング)を行う、という条件でも同様の実験をした。すると、ガムを噛んだケースは、P300が現れるまでの時間(潜時)とボタン押しの反応時間が早くなり、繰り返すほど効果は明らかだった。一方、何もしない時には変化は見られず、顎や指の運動ではむしろ反応が遅くなり、P300 の潜時は長くなった。
坂本研究員は、
「メジャーリーガーが試合中にガムを噛むことや、車の運転中にガム噛みを行うことによる脳の覚醒効果の根拠が、生理学的に証明された」
とコメントしている。
噛めば噛むほど脳の働きが短期的に活発になるが、「頭が良くなる(知能や認知力が高まる)」とは言えないという。