ネットで有名になり、新聞が売れる そんな好循環が中国では可能だ
(連載「新聞崩壊」第11回/中国メディア研究者 ミン大洪さんに聞く)

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新聞のコンテンツは即刻ポータルに掲載される

――就職、火事の情報、伝染病の流行、盗難、俳優の私生活など、政府機関紙ではほとんど報道しない内容、市民の生活にかかわりのあるニュース、面白いニュースを流しています。しかし、一線を超えて、政府の見解と違う記事が出かねません。

ミン   政府の管理はきちんとしています。「経営性の新聞」でも、政府の見解と違う記事を作ってしまったら、それは政府機関紙の経営者、さらにその傘下の経営性新聞の経営者は責任を取らされると思います。

――「経営性の新聞」の経営は今後も安泰でしょうか。

ミン   それは保障できません。競争は激しくなっているし、不動産や自動車産業にかげりが出たので、2008年の下半期から状況は一変しました。とりわけ広告について今年はどうなるか、あまり明るい展望は望めません。

――中国の多くの若者は、インターネットに熱中しています。

ミン   シナネット(sina net)、ソーホーネット(Soho net)など中国では巨大なポータルサイトが発達しています。新聞で公表したコンテンツは即刻そこに掲載されます。いつでもどこでも読めます。一つのポータルサイトがあれば、なんでもそこから情報を引き出せます。

――外国では記事を全部ネットに掲載されると、新聞が売れなくなるという現象が起きています。

ミン   中国では状況は少々違います。若い読者はまずインターネットでニュースを読みます。自分の好きな記事を検索して読みます。その一方で、彼らはスタンドで新聞を買い、地下鉄でも自宅で読みます。インターネットに記事を掲載してしまうと、新聞が売れない、という現象はないのです。将来はわかりませんが。
   新規創刊する新聞は、インターネットからも情報を発信しています。インターネットによって有名になり、今度は新聞の方がどんどん売れる、という好循環ができています。

――ネットに書き込みもする人がずいぶん多いですね。

ミン   昔、「大字報」(壁新聞)でしたが、今はインターネットの書き込みです。自由に発言しています。

――ただし、取材ができるポータルサイトは少ないですが。

ミン   それで新聞は助かっている。ポータルサイトは掲載された記事をアップしていくだけです。新聞への依存度が高まっている、といってもおかしくありません。

ミン大洪さん プロフィール
Min Da-hong 1946年生まれ、中国社会科学院新聞研究所教授、中国インターネットメディア協会長。1981年から中国社会科学院新聞とコミュニケーション研究所に勤務、80年代にはコミュニケーション技術の、90年代からはインターネットの研究をした。インターネットおよびデジタルメディア研究室部長。
主な著作は、『数字伝媒概要』(デジタルメディア概要 2003年、復旦大学出版社)、『互聯網対社会政治影響研究』(インターネットが社会政治に対する影響の研究 2004年、国家社科基金項目)など多数。

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