ネットで有名になり、新聞が売れる そんな好循環が中国では可能だ
(連載「新聞崩壊」第11回/中国メディア研究者 ミン大洪さんに聞く)

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   新聞の発行部数が1日あたり1億を超える中国では、共産党幹部を読者とする人民日報などの政府機関紙に、読者離れが起きている。一方、その傘下にあるタブロイド紙は、百花繚乱の状況を呈し、全盛期を迎えている。中国の新聞の現状と未来をメディア研究者のミン大洪さんに聞いた。

政府機関紙は発行部数がどんどん減っている

「政府の管理はきちんとしています」と話すミンさん
「政府の管理はきちんとしています」と話すミンさん

――例年のことですが、年末に共産党機関紙の人民日報、国務院機関紙の経済日報は、拡販に力を入れました。それでも、あまり効果が出ていないようですね。

ミン   赤字で印刷した機関紙購読勧誘書が、地方自治体から数多く出されてました。省レベル、市レベル、さらに市の下にある県レベルからも出されています。機関紙を購読せよ、と命令するようなものですが、従う人は少ないようです。
   中国では日本のABCのような、新聞発行部数を厳格に調べる機関はありません。自称の発行部数だけです。しかもそれは、新聞社の最高の機密とされています。新聞社の広告収入と直接関連するからでしょう。ただ、自称の発行部数でも、政府機関紙の発行部数は減り、あまり数字を公表しなくなりました。状況は厳しいはずです。

――政府機関紙以外の新聞の方が人気があるわけですね。

ミン   中国では1日に1億部以上の新聞が販売されています。世界中どこにもない規模です。新聞スタンドで自由に売買している新聞は、改革開放政策の中で出てきました。市民の注目を集め、あっという間に政府機関紙の市場を奪ってしまったのです。中国では「経営性の新聞」と呼んでいます。
   若い読者は共産党の幹部、政府官僚を対象とする人民日報、経済日報にはほとんど興味はありません。

――政府機関紙はどうしようとしているのですか。

ミン   年末に、国務院の新聞出版署(局)で会議が開かれました。「経営性の新聞」と「公益性の新聞」(政府機関紙など)を分けて議論しました。政府機関紙はおそらく宣伝メディアとしてずっと必要であり、「公益性の新聞」と名前を変えて、残されていくだろうと思います。政府系新聞の発行部数の増加はあまり期待できないが、その傘下にある「経営性の新聞」が伸びれば何とかなるでしょう。

――つまり、人民日報の経営が成り立たなくても、傘下の環球時報がどんどん稼ぐ。それで安泰なわけですね。

ミン   中国には政府機関紙を中心に、85の新聞グループがあります。人民日報の下には若者に人気のある環球時報があります。同じ機関紙である光明日報の下にも、北京市民が愛読している新京報があります。これは、文化、芸能といった情報も盛り込んだ庶民的な新聞です。このように、機関紙の傘下のこれらのタブロイド紙は発行部数も多く、広告も入っていて、いずれも稼ぎ頭です。そのせいで、機関紙自体の経営も安泰です。
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