ピンポイントで炸裂する高性能爆弾、小学校からロケット砲を撃つテロリスト…。イスラエルの国防軍が、ユーチューブにこんな動画を次々に投稿している。まるで、テレビに湾岸戦争の映像を提供したかつての米軍のようなのだ。
「被害を最小限に留めています」
イスラエルのユーチューブ投稿動画
トラックの回りで、白っぽく見える男たちが、忙しなく動いている。そして、荷台に長くて黒っぽい塊が次々に積まれていく。
「ハマスの車両に詰め込まれるミサイルです」
そんな字幕が出て、射撃ゲームのようにターゲットが合わされた。しばらくして、画面が一瞬途切れる。すると、現場から閃光と白煙が上がるのが、生々しく映し出されていく。
このシーンは、イスラエルの国防軍がユーチューブに現地時間2008年12月28日に投稿した3分弱の動画だ。空軍がハマスのロケット砲部隊を攻撃する様子を空から撮影している。人が動くのが見えるなどと反響を呼び、09年1月6日までに40万回以上が再生された。
イスラエル国防軍は、この動画を含む広報チャンネルを立ち上げ、現在は31本もの動画が公開中だ。外電などによると、報道官は、「世界にわれわれのメッセージが届くように」と説明。前出の動画は、正確にロケット部隊だけを攻撃していることをPRする狙いがあるとみられ、報道官もチャンネル内で出演し、「被害を最小限に留めています」などと訴えている。
ユーチューブではほかに、モスクに隠されていたとする武器の貯蔵庫を空軍が攻撃し、この武器のため2度目の爆発が起きたと、現地時間1月1日の動画で紹介している。
さらに、ハマス側の「卑劣な手口」も紹介。テロリストが小学校の校舎わきで車両からロケット砲を撃ったとする現地時間07年10月29日の動画もアップしている。
効果について見方が分かれる
広報チャンネルには、コメントが付く動画と付かない動画がある。登録者1万2000人余からしか受け付けないためか、コメントには、イスラエル擁護のものが多い。中には、
「行け!イスラエル」
「ハマスが攻撃を止めないなら、ガザをじゅうたん爆撃すべきだ」
と戦闘を煽るものも見られた。
一方、地上戦にまで突入した事態を懸念する声も出ている。
「一人のイスラエル人が殺されると、少なくとも10人のパレスチナ人が殺される」
「恐ろしいことに、今やハマスは、食料や医薬品を病人や死んでいく人々に持ち込むことさえできない」
ほとんどのコメントは控え目なものの、「なんという大虐殺。人類の恥だ」といった声もまれにあった。
イスラエルの投稿動画については、その効果について見方が分かれている。
外電を紹介したサイト「スラッシュドット・ジャパン」では、コメントの書き込みで
「造られた映像で大衆を誘導することもできる。瓦礫の上で叫ぶ女性、油まみれの海鳥など、湾岸戦争のときにもいろいろあったよな」
との指摘があった。その一方で、
「かえって、映像を選別してプロパガンダやってるだけだろう、と反発を買うのではないか?」
と冷めた声も出ている。