トヨタ自動車が、2009年3月期の連結決算(米国会計基準)で営業赤字に転落する見通しになった。営業損益は、従来予想の6000億円の黒字から、1500億円の赤字に陥る見込みだ。トヨタの営業赤字は、記録が残っている1941年3月期(当時は単独・半期決算)以来初めてで、事実上、初の赤字決算という異例な事態になる。
トヨタの08年3月期の連結営業利益は2兆2703億円で過去最高を記録した。わずか1年で、営業利益は2兆4200億円余りも落ち込む計算となる。
「すべての国で日を追って変わっていて底が見えない」
トヨタの業績が急激に悪化した最大の背景には、9月の米証券大手リーマン・ブラザーズの破綻(はたん)を機とした世界的な金融危機の深刻化がある。12月恒例の年末会見でトヨタの渡辺捷昭社長は「100年に1度と言われる危機的な状況だ。厳しさは、予想を超えるスピードと広さと深さで拡大している」と苦渋の表情を浮かべたが、世界各地の市場に広がる急速な販売不振と円高がトヨタの利益を吹き飛ばしている。
販売減は欧米や国内市場だけでなく、これまで好調だった中国など新興国市場にもじわじわと広がっている。「すべての国で日を追って変わっていて底が見えない」(渡辺社長)という状況だ。トヨタは子会社のダイハツ工業と日野自動車を含めた08年度の連結販売台数は、11月には824万台と予想したにもかかわらず、12月には754万台に下方修正した。年末恒例の翌年の世界生産販売計画の公表さえ、市場の不透明さから、今年は見送ることを余儀なくされた。
ガソリン高の逆風でも堅調に売り上げを伸ばしていた低燃費のハイブリッド車「プリウス」さえ苦戦している。米国での08年11月のプリウ スの販売台数は前年同期比48%減という惨たんたる現状だ。トヨタは7月、10年末に稼働予定だった米南部ミシシッピ工場について、生産車種を当初予定の大型車からプリウスに切り替えると発表したが、ついにはミシシッピ工場の稼働時期自体を延期することになった。
12月から09年3月までの為替差損8900億円
円高もトヨタの業績を大きく圧迫している。トヨタは08年度下半期の想定レートを1ドル=100円としていたが、外国為替市場では、既に1ドル=90円を割り込む水準まで円高が進んでいる。トヨタは対ドルで1円の円高が進めば、年間の営業利益が400億円減少する計算となり、対ドルと対ユーロの為替差損は12月から09年3月までに8900億円に達する見通しだ。
渡辺社長は、今後の成長戦略について、「長期的には新規需要は必ずある。今は弾を込めるというか、しっかり技術開発をしていくことが大事だ」と述べたが、市場回復の見通しがたたない中、厳しい忍耐の期間が続く。