新聞を法律で守る必要あるのか 「再販制」という反消費者制度
(連載「新聞崩壊」第6回/鶴田俊正名誉教授に聞く)

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再販制で守られたことが現在の苦境を招く皮肉

――新聞社は、ネット上で無料ニュースを相当な分量配信しています。紙では全国均一価格にこだわる姿勢とは矛盾しているのではないでしょうか。

鶴田   そうですね。新聞の長期購読者が割引などのメリットを受けられない一方、ネットではただや極めて安い料金で見ている人がいる。紙の新聞は読まず、ネットでニュースを見ただけで済ませる人が、若い人たちだけでなく私の周囲でも本当に増えています。特色ある新聞作りをこれまでに進めていれば、紙の優位性はもっとあったはずだと考えています。

――では、再販制の廃止が認められ、各紙が競争的に独自性ある紙面作りを進めていれば、ここまで新聞も苦しくならなかった?

鶴田   そうだと思います。新聞を守るために再販制を守ったつもりなのでしょうが、皮肉なことにその再販制に守られた中で新聞はここまで苦境に陥ってしまいました。再販制をたてに独自性を十分に発揮する競争から逃げてしまったからではないでしょうか。

――外国では新聞と再販制の関係はどうなっているのでしょうか。アメリカはありませんがなぜないのでしょう。

鶴田   最新状況は知りませんが、以前調べたときは、OECD(経済開発協力機構)加盟の中では、日本とドイツだけでした。ほかの国で新聞の再販制がないのは、必要がないからですよ。新聞もほかの商品と同じように売買される、というだけの話です。

――公取の01年の結論では「当面」とありました。新聞の再販制度は、近頃あまり話題になりませんが、決着はもう「存続」でついてしまったのでしょうか。

鶴田   まだ決着はついていないと考えています。新聞の特別扱いはおかしい、という考え方は底流として根強くあります。いずれまた公取は問題にせざるを得ない、と見ています。しかし、新聞社とコトを構えるのは相当エネルギーがいることなので、よほど公取のトップに腹の座った人がつかない限り、難しいかもしれません。

<メモ:再販制度と新聞>
再販売価格維持制度。製造業者(新聞社)が小売業者(新聞販売店)と定価販売の契約を結ぶことができる。独占禁止法で原則的に禁じられているが、1953年の独禁法改正で新聞や書籍など著作物は例外的に認められ、現在に至っている(法定再販)。新聞の場合、特殊指定(定価割引の原則禁止など)と合わせ、全国どこでも同じ料金という現在の状態が可能になっている。


鶴田俊正名誉教授 プロフィール
つるた としまさ 1934年、東京生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業、同大学院経済学研究科修士課程修了。1988年から2001年まで、公正取引委員会の「政府規制等と競争政策に関する研究会」で座長を務める。その間、「再販問題を検討するための政府規制等と競争政策に関する研究会」の座長にも就任し、公取委への提言をまとめた。現在、専修大名誉教授(経済政策、産業組織論)。社団法人「消費者関連専門家会議」(ACAP)会長。

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