米国の新聞は決断した 「紙が減ってもウェブ中心でやる」
(連載「新聞崩壊」第5回/アルファブロガー・田中善一郎さんに聞く)

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中高年層には「現状のコンテンツの方が安心」

――日本の状況を見たときに、日本の新聞社サイトは、どういう風に変わるべきだと思いますか。

田中   一部の新聞社を除いてほとんどは、本気でネット事業に突っ走っているとは思えません。皮肉に聞こえるかもしれませんが、中高年向きの現状のサイトは合理性がある。少子高齢化で増えている中高年層では、「編集者の価値観でつくられた現状のコンテンツの方が安心」という声が主流でしょう。さらに何だかんだ言っても、売り上げは紙媒体の方がネットよりもはるかに多い。コンテンツをつくるのも営業をするのも、ネットの方が手間暇かかって大変なのです。紙と違ってネットでは、24時間対応しなければなりませんし。今の新聞社の人的リソースからすれば、ネット中心の事業展開はしばらく難しいでしょう。

   やっぱり、ネットはやりたい人がやるべきです。紙媒体がダメになりそうだから、しかたなくネット媒体をやらされるでは成功しないはずです。意欲的にネット媒体に転身したいという若い人が増えてくればいいのですが。外部の血を導入するのも必要では。オンラインメディアに長けたネットベンチャーを買収するくらいでないとうまくいかないかもしれません。

――そうなると、中長期的にはジリ貧なのでは。

田中   確かにそうですが、「新聞が危ない」のではなくて「紙媒体が危ない」ということでしょう。新聞が提供してきたニュース記事のニーズがなくなっているのではない。何だかんだ言っても、いずれ紙媒体の時代は終わって、ネットが中心になっていきます。「質が高くて信用できるニュースメディアは新聞」と主張する人もいますが、「それが紙でないといけない」理由はどこにもありません。米国では、著名な記者がブロガーに続々と転身しています。多くの優秀な記者がネットメディアにはり付いていけば、ニュースペーパーは消えてもペーパーでない新聞が生き続けるのでは。

田中善一郎さん プロフィール
たなか・ぜんいちろう 1945年、兵庫県生まれ。68年、大阪大学工学部卒業。同年、コンピュータメーカーに入社し、情報通信システムの開発に従事。74年、日経マグロウヒル社(現・日経BP)に入社、「日経エレクトロニクス」記者を経て、「日経バイト」編集長、「日経コミュニケーション」編集長などを歴任。2006年4月、同社を退社。インターネット業界動向をピックアップし伝えるブログとして「メディア・パブ」を執筆中。

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