米国の新聞は決断した 「紙が減ってもウェブ中心でやる」
(連載「新聞崩壊」第5回/アルファブロガー・田中善一郎さんに聞く)

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米国では3-4年前から新聞広告が急に落ち込む

――こうした試みで、確かに情報の価値が上昇しました。問題は、その結果「儲かるか」です。

田中    紙媒体では儲からないという結論を下し、儲かるかわからないネット媒体にシフトしているのが現状です。そこで米国の新聞社がどう変化してきたかを振り返る必要があります。実は、1970年ぐらいから読者の減少が始まっています。米国の人口が2億から3億に増えているにもかかわらずです。つまり、「新聞を読む人の割合」が、劇的に減った。それでも、指導者層の新聞に対する信頼は揺らがなかった。「信用できるニュースがいつでも得られる」メディアとしては、当時は新聞しかなかったからです。そのため、部数が落ち込んでも、新聞広告費が70年から2000年までの30年間で6倍以上も伸びたんです。「広告は上向きだったので、危機感を持つのが遅れた」と言う面があります。

   ところが、ブログなどのソーシャルメディアが普及しだした3~4年前から、新聞広告が急に落ち込み始めました。この頃が転換期だと思います。06年~07年にかけて、広告は大幅に落ち込んだ。世間一般の景気がいい時でしたので、新聞社も「これはまずい」と受け止めた。みんなが「新聞が消える」と言い出したのはこの頃です。部数と広告が減少する負のスパイラルが加速化し、止まりそうもない、というのが現状です。これに金融危機が加わって、まさに踏んだり蹴ったりの状態です。

――ウェブと紙媒体の住み分けはできるのでしょうか。

田中   今までと逆に、紙はウェブの補完となっていくでしょう。頭が痛いのは、ウェブを充実させると、紙媒体の販売収入が減ってしまうこと。ニューヨーク・タイムズが、最も典型的な例でしょう。それでも、「紙を減らしてでも、ウェブをやるべき」という決断をした。収益性が悪くても、やらざるを得ない。

――日本の新聞社は、まさにその入り口にさしかかっていると言えそうですね。

田中   さらに米国の新聞社にとって具合が悪いのが、収入の7~8割を広告に依存していることです。それが年率で15%ぐらい落ち込んでいる。特にクラシファイド広告(求人広告など)の落ち込みがひどくて、ニューヨーク・タイムズでもこの1年で3割近く落ち込んでいる。これらの広告はネットに流出してしまったので、紙媒体に戻って来ることは絶対にありません。ネット広告がV字回復し,ネット事業が新聞社のけん引車になるまで、米新聞社の何社が持ちこたえられるかどうか。淘汰は避けられないでしょう。
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