明けましておめでとうございます。「マネーの虎」は2009年も、皆さまに立つ、さまざまな情報を提供していきます。どうぞ宜しくお願いいたします。
2008年は9月のいわゆる「リーマン・ショック」以降、株式、社債、原油などのように、取引所で売買される商品の値段はおしなべて下がった。不動産も大きく下がった。さらにはほとんどの外貨の価値が円に比べて下落した。
そのため、今はだれもが価格変動リスクにおびえており、現金あるいは国債に資金が殺到している。これを逆から見ると、今こそ株式や商品投資についての絶好の買い場というようにも映る。というのは、これらの価格の下落が主に通常の価格変動によるのではなく、商品の流動性が極端に落ち込んだ、つまり買い手がいなくなったためだと考えられるからだ。
バブルがいつかははじけるのと同様に、このような極端な価格の下げもまた、いつか是正されるはずではないか。そうであれば、これらの価格は将来的にまた上昇をはじめるだろう――そういう推測ができるところだ。
狙い目は価格が下がっても家賃収入は減らない物件
その意味では、どの商品も上昇の可能性を秘めていると言えよう。その中で、わたしとしては2009年に、特に期待される商品は「不動産」と「原油」だと考えている。
不動産価格はこのところ2、3年前には想像もできないような急激な下落をみている。銀行が資金を出さなくなったことが止めを刺した格好だが、買えるだけの資金を持つ人がいなくなれば、売買価格が大きく下がるのも当然だ。
しかし、不動産の本来の価値はその収益力にある。今は優良物件であってもその売買価格はどんどん下がっているが、立地その他の条件が良ければ、その価値の源泉たる賃料収入はそう急激にさがるものではない。そこで売買価格は下がったが賃料は減らないという物件が狙い目だろう。
今は東京の優良物件でも利回りが年10%を越えるようなものが多く市場に出回るようになった。これは滅多にないほどの魅力的な投資対象だといえるのではないか。
原油は2009年も「ジェットコースター」のように動く可能性
原油については中東の政治状況や埋蔵量などの不確定要因があまりにも大きいため「妥当な価格」を知るのは極めて難しい。ただ、それにしてもあと数十年で枯渇するといわれる鉱物資源の価格が、1バレルあたり30数ドルというのはさすがに低すぎる。
これをもたらした最大の要因は、現在の市場価格が市場関係者の短期的な心理状態をあまりにも反映しているところにある。このところ、OPECが減産を発表したとか、株価が下がった、というニュースが報じられるたびに原油価格がますます下がる、という状況が繰り返されている。
しかし本来は、産油国が減産すれば需給が逼迫して価格を押し上げるはずだし、原油価格と株価は原理的に逆相関であるはず(原油価格の下落は企業の利益を押し上げるため)なので、こんな状況は本来おかしい。つまり、現在の価格変動はファンダメンタルではなくバブルの収縮によるものなのだ。
したがって、今後何かのきっかけでまた原油価格は上昇していくとみてよいのではないか。さらにいうと、2008年と同様に100ドルを超えて、その直後に50ドルに落ちる、などといったジェットコースターのような動きをする可能性もあると思う。「原油の価格が下がってひと安心」などと言っている場合ではないと考える。
++ 枝川二郎プロフィール
枝川二郎(えだがわ じろう)国際金融アナリスト
大手外資系証券でアナリストとして勤務。米国ニューヨークで国際金融の最前線で活躍。金融・経済のみならず政治、外交、文化などにもアンテナを張り巡らせて、世界の動きをウォッチ。その鋭い分析力と情報収集力には定評がある。