「変態記事」以降も毎日新聞の「ネット憎し」変わっていない
(連載「新聞崩壊」第3回/ITジャーナリスト・佐々木俊尚さんに聞く)

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「うちの会社で起きたら、震え上がりますよ」

――毎日新聞側からすれば「不当に攻撃された」と思っているということですね。一方で、ネット側の毎日新聞に対するとらえ方は変わったでしょか?

佐々木   WaiWai事件が起こったという事実から受ける印象は変わらないんですが、問題は対応の仕方です。例えばお詫びの文章のなかに、「法的措置をとる」と強面で書いてあったり、PJニュースや個人のブロガーにひどい対応をして、そのことを(各メディアに)暴露されたりとか。今回のWikipediaの誤報の件でも、訳の分からないお詫びが紙面に出て、書かれた本人がWikipediaのノートで「毎日の記者から、こんなひどいこと言われた」と暴露している。こんなことがあると、ネットの人間は「毎日は、心底我々を憎んでいるんだな」と思ってしまう。一番びっくりするのは、これまで同様なことが起きているのに、また同じ誤りを繰り返すこと。WaiWaiの時にPJニュースとJ-CASTに(対応のずさんさを)書かれて分かっているはずなのに、それが全ての記者にいきわたっていない。毎日新聞はガバナンスが不足している会社なので、そういったことが末端まで行き渡っていないのかも知れない。

――毎日新聞以外の他の新聞社も、「電凸」を恐れているのでしょうか。

佐々木   みんな「うちの会社で起きたら、震え上がりますよ」といいます。だから自社の紙面ではWaiWai事件を大きく報道しなかった。報道したら、自分のところに降りかかると思っています。

――現場の記者は、WaiWai事件をどう受け止めていますか。

佐々木   私がつきあっている30代の記者はメディア担当が多いので、リテラシーの高い人ばかり。彼ら(毎日新聞の記者)からは「毎日新聞はつらい。上に何を言っても理解されない」という声も聞こえます。

――具体的には、どんなところが「理解されない」のでしょう。

佐々木   例えば、双方向性を理解していないこと。言論がフラット化していることを理解していない。「ブログは素人が書いているもの」ぐらいにしか思っていない。1990年代まではインターネットもしょせんはマス媒体をウェブ化しただけで、言論のフラット化なんて起きなかった。だからそのころまでは彼らもネットをある程度は理解していたと思うのですが、2000年代に入ってブログの登場などソーシャルメディアが台頭してくると、言論は瞬く間にフラット化された。しかしこのようなソーシャルでフラットな世界というのは、その場に身を置いている人間ではないと皮膚感覚として理解できないんです。新聞社との人間とブログの人間は、違う言語空間に生きています。ほとんどの新聞社の人間はブログなんて見ていなくて、彼らにとって、ネットとは「アサヒコム」なんです。
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