「変態記事」以降も毎日新聞の「ネット憎し」変わっていない
(連載「新聞崩壊」第3回/ITジャーナリスト・佐々木俊尚さんに聞く)

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20~30代の若手記者までネットの悪口を言っている

――今回の「電凸」も、数から言っても「一部の人でやっている」というのは考えづらいですよね。

佐々木   WaiWai事件について、2ちゃんねるにはスレッドが230ぐらい立ちました。書き込みにして23万ぐらい。「一部の人が書いている」というのは、根拠がなさ過ぎる。ミクシィにも波及しているし、ブログにも広がっている。その読者も含めると、相当な数にのぼります。大手メディアではほとんど報道はされませんでしたが、インターネットを頻繁に利用する人は、大半が知っています。WaiWai事件を「毎日新聞低俗記事事件」と書いたら「そうじゃない」と怒られたこともありました。「あれは日本女性に対する侮辱であって、単なる低俗な記事を書いたということではない」、と。この事件は、本当に多くの人の怒りを呼んだんです。

――「『電凸』は威力業務妨害だ」といった指摘もありますね。

佐々木   そもそも、それを「威力業務妨害」だと発想するのが理解不能ですよ。だって、消費者運動の一種じゃないですか。実際に物を壊すとかであれば、威力業務妨害ですが、「電話をして抗議する」というのは、1970年代から消費者運動として行われてきたことです。

――2ちゃんねるの利用者層とは逆に、新聞の読者層についてはいかがですか。

佐々木   新聞の側が、読者の年齢層を上げてしまっています。元々、新聞では「標準家庭」という言葉が以前は使われていて、これは40歳ぐらいで専業主婦の妻と子供二人のいるサラリーマン家庭をイメージしたものです。そういう人たち向けに新聞を作っていたわけですね。ところが、若い人が新聞を読まなくなって、90年代ごろから読者の高齢化に付き添うようにして、新聞の中身も老化してしまうようになった。
   その結果、中心読者層が60-70歳代になっていて、知らない内に、書く側も、それに合わせてしまっている。私は47歳ですが、(自分が毎日新聞に在籍していた時の)同期の記者に会うと、「何でそんなに老けた考えしてんの?」と、ビックリすることが多い。みんな「世の中が悪くなった」とか言いたがる。自分が理解できないモノは全部ダメなものだと考えてしまっていて、「ネットが悪い」「いまの若者はだめだ」と言いたがる。そんなもの、単なる老人史観でしかありません。

――新聞社の人は、「2ちゃん・ネット=悪いやつ」というイメージを持っているんでしょうね。

佐々木   新聞業界の人からは、「ビジネスとしてはインターネットとつきあっていかなければならないのはわかっているが、生理的にはどうしても受け入れられない」という考えが伝わってきます。

――毎日新聞は、特にその傾向が強いと思いますか?

佐々木   不思議なのは、ネットをよくわかっていない50代の記者が「ネットはけしからん」というのならともかく、20~30代の若手記者までネットの悪口を言っていることです。WaiWai事件以降、様々な地域面のコラムでネットの悪口が書かれるようになって、明らかに社内に「空気」ができているのだと思います。どう見ても、明らかに若い記者が書いている。毎日新聞は「ネット憎し」の空気で埋まってしまっている。
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