「派遣切り」と叫びながら男が包丁を振り回した事件で、2ちゃんねるで同じ時刻ごろに犯行を示唆するかのような書き込みがあった。この男によるものかは不明だが、事件のあった六本木で「ヒトさす」などとあった。
「金ねぇ 今から六本木でやってやる」
「犯行予告」のような2ちゃんねるへの書き込み
書き込みがあったのは、「ニートや引きこもりのいる家を探し出し、相談員が自宅訪問、就業体験を促す…ニート・引きこもり支援新法制定へ」というスレッド。その10スレ目の8番目に、「なぁ」とのハンドルネームで次のような書き込みがされた。
「派遣切りとかふざけんな!! 金ねぇ 今から六本木でやってやる ヒトさすとどんな感じなんだ」
その時刻は、2008年12月30日午後8時31分。すると、スレ上では「アウトだね。通報通報」との反応がいくつかあった。
東京・六本木の事件では、同じころ、六本木ヒルズ正面玄関付近で包丁を振り回していた杉並区在住の無職、椎名賢次容疑者(28)が、通行人からの連絡で駆けつけた警視庁麻布署員に銃刀法違反と公務執行妨害の現行犯で逮捕された。
椎名容疑者は、新聞各紙によると、「派遣社員の契約を切られた」などと叫び、署員らに「刺すぞ。この野郎」などと抵抗する構えをみせた。そこで、署員が拳銃1発を上空に威嚇発砲すると、おとなしく包丁を地面に置いたという。けが人はなかった。
六本木ヒルズは当時、年末の買い物客らでにぎわっていたといい、目撃した人も多かったようだ。男を見て慌てて逃げ、店に避難した人もいた。真偽は不明だが、2ちゃんねるの別のスレッドには、こんな証言もある。
「今日朝6時過ぎにヒルズの東京タワーが見える喫煙所前通ったらこいついたぞ ひとりでに街頭演説みたいなことやってて何言ってるかわかんなかったけど 『ワタシハシイナケンジ、シイナケンジ』とか連呼してた」
「マジマジ ちょうど森タワーの前つーか喫煙所に向かって水の流れる壁が終わったあたり 時間はちょうど630かな 急いでたからちら見して通り過ぎたけど何かをずっと一人で喋ってた とにかくシイナケンジってのを連呼してて頭に残ってる」
若者支援のあり方に何か憤りがあったのか
犯行予告のような書き込みがあったスレッドは、産経新聞の2008年12月29日付記事についてだった。そこでは、ニートや引きこもりの若者の自立などを支援するため、政府が「若者支援新法」(仮称)を09年の通常国会に提出する方針を決めたと報じられていた。「犯行示唆」は、秋葉原通り魔事件を起こした加藤智大被告を似顔絵付きで「革命家」などと紹介する書き込みの直後にあった。加藤被告も、犯行前にネット上に「犯行予告」を書き込んでいたことが分かっている。もし犯行予告なら、若者支援のあり方に何か憤りがあったのかもしれない。
各紙によると、椎名容疑者は、05年に大学卒業後、美術関係のアルバイトなどを経て、1年ほど前から派遣社員として仕事をしていた。どこの会社かはまだ分かっていないが、調べに対し、「派遣の契約が切れ、次の仕事が決まらずにうっ憤がたまっていた。刃物で人を脅かして自分を誇示したかった。逮捕されなければ、人を傷つけてしまったかもしれない」と供述しているという。
ネット上では、犯行への冷ややかな見方が多い。2ちゃんでは、「加藤もそうだけど 目立って構って欲しいだけで、派遣だからどうとか後付だよね」「留置所で飯食う作戦かこれ」といった書き込みがある。