不況の影響で、患者が減る歯科医院が多くなっている。この1年で医院の4割で減少したといい、患者負担が大きいのもネックになっているようだ。義歯を作っても後で来なかったりするなど、歯医者さんもやり繰りに大変だ。
古い義歯も「修理で何とかして下さい」
「痛みやしびれといった急性症状以外は、かからない人が多いようです。それも、軽い痛みなら、2人に1人は受診しないという調査結果があります」
全国保険医団体連合会の歯科担当者は、こう明かす。
このところ、患者の歯科離れは著しい。同連合会によると、2008年6月の患者数は、前年6月に比べて、「減った」が約4割。歯科診療報酬改定影響の会員調査で分かったことだ。「変わらない」も4割で、「増えた」は、2割弱に留まっている。
「歯科は、保険に比べて患者の自己負担の割合が高く、高齢者を除けば3割にもなる影響が大きいですね。所得が低く経済的に厳しい人なら、『ちょっとしみるけど、我慢しよう』と思ってしまうようです」
特に、目立つのが、初回以降の受診回数が減っていることだ。例えば、自己負担が高いため、初回で3000円を超えないように歯科医が配慮するとする。そして、もう少し治療をと思っていても、その後来院しなくなる患者も多いという。中には、義歯を作ってあげても来なくなり、医者がかぶるケースもあるというのだ。義歯は、数万円するものもある。
「義歯は、『新しく作った方がいい』と勧めても、『修理で何とかして下さい』という患者さんも多いようですね。患者側の抑制が進んでいます。しかし、これでは、診療計画が、医学的ではなく、経済的に変更されてしまいます。治療上は、よくありません。負担を軽くするため、保険の適用範囲を拡大すべきです」
歯科医院は過剰気味で「学生は、確実に獣医に行く」
患者減少で、経営が苦しい歯科医院も多くなっているようだ。
歯科医院は過剰気味で、厚労省調査によると、全国でコンビニの1.5倍以上の7万か所近くある。そこに今回の不況が直撃して、患者の足が遠のいたのだから大変だ。
ミクシィの日記でこの問題を取り上げた千葉県浦安市のニシオ歯科の西尾元秀院長は、こう話す。
「どこまで本当かは分かりませんが、このところ、雑誌では、『歯科医の5人に1人はワーキングプアかその寸前』『学生は、歯科医と獣医なら確実に獣医に行く』といった記事をよく目にします。不況で、特に低所得者が歯科医の利用を控えているようですね」
患者が減っている歯科医はかなり多いと思っていたという。ミクシィでは、2008年12月18日の日記で、「意外です。(現場の)感覚では60%くらいかと思っていました」と明かしている。
ただ、西尾院長は、歯科医は、いい悪いに2極分化しているとみる。
「うちは、歯槽膿漏の診療などあまりお金にならないことをやってきたのが評価され、逆に患者の数が増えています。適当なところはダメですが、まじめにやっているところは生き残ります。逆に言えば、地道な努力をしないと厳しいということですよ」