景気後退にともなって、いわゆる「派遣切り」の問題が深刻化する中、正社員を削減する動きが加速している。日本IBMが1000人の希望退職を募集したのに始まり、ソニーは全世界の社員のうち5%にあたる8000人を削減する。それ以外にも、富士ゼロックス、日興コーディアル証券、パナソニック電工(旧・松下電工)といった大手企業が続々と正社員削減策を明らかにしており、新年は、いよいよ正社員にもリストラの波が押し寄せて来そうな情勢だ。
早期退職、希望退職を募集する企業が続々
雇用状況の悪化は、各省庁の発表する統計資料にも、次々に現れだしている。例えば、総務省が2008年12月26日発表した08年11月の完全失業率(季節調整値)は3.9%で、前月から0.2ポイント上昇した。完全失業者数は2か月ぶりの増加に転ずる一方で、就業者数は10か月連続で減少している。一方、厚生労働省が同日発表した08年11月の有効求人倍率(同)は前年同月比0.04ポイント減の0.76倍で、「働き口」は確実に減少していることが伺える。
ただ、正社員の有効求人倍率は、さらに低く、0.50倍。前年同月から0.13ポイントも下落しており、減少の度合いも大きい。
これと時期を同じくするようにして、正社員の人員削減策を打ち出す企業が続出している。日本IBMが約1000人の削減を打ち出し、組合が反発したのは記憶に新しいところだが、それ以外にも製造業の正社員削減が目立つ。例えば富士ゼロックスは09年度までに非営業職を最大2500人削減する方針だ。具体的には、半数の1250人を営業部門に配置転換し、残り半数については早期退職を募る。オフィス機器の需要が落ち込む中、コスト削減と営業力のテコ入れをはかりたい考えだ。 富士ゼロックスと競合関係にあるOKI(沖電気工業)は、満50歳以上か勤続25年以上の管理職を削減する。条件に該当する1250人に対して早期退職を募集し、300人程度の応募を見込む。
少なくとも7000人の正社員がすでに削減対象
住宅関連業界にも正社員削減の波は及んでいる。パナソニック電工(旧・松下電工)は、2011年3月末までに国内の工場3か所を閉鎖し、これまでに閉鎖した工場とあわせて計1000人を削減する方針だ。そのうち、550人は正社員だ。ただし同社広報部によると、基本的には採用数を抑えることで対応する方針で、
「定年退職した分を補充しないとか、工場を閉鎖した際に『転勤するぐらいなら退職する』というと言うような『自然減』の範囲でカバーできると考えています。希望退職を募るまではいかないのでは」
と話している。
それ以外にも、日興コーディアル証券、学研、三井住友建設、コロムビアミュージックエンタテインメントなどが正社員の早期退職募集に踏み切っている。このように、正社員削減を進めている企業の業種は多岐にわたっている。08年10月以降の新聞報道などで判明している分をまとめただけでも、国内では少なくとも7000人規模(「全世界で8000人」のソニーを除く)の正社員が削減の対象となる見通しだ。