TBSが2009年4月に認定放送持ち株会社に移行するための臨時株主総会が08年12月16日開かれ、筆頭株主の楽天は予想通り反対を表明した。同持ち株会社 への移行は賛成多数で承認されたため、持ち株会社に出資する1株主の議決権は33%以下に制限されることになる。TBSが事実上、買収防衛策の強化に成功したのに対し、TBS株を約19%保有する楽天はこれ以上買い進むメリットがなくなった。楽天は即日、TBS株の買い取り請求権を行使する可能性を示唆した。今後は楽天が権利を行使し、損失覚悟でTBS株を売却するか否かが焦点となる。膠着状態が続くTBS対楽天の攻防は、09年春がヤマ場となる。
このままTBS株を保有するメリット少ない
臨時株主総会終了後、楽天の高山健取締役は報道陣に対し、株式買取請求権の行使について「3月末まで時間をかけて考える」と述べた。05年10月に楽天がTBS株を一気に買い占めた当時の株価は3100円前後。約6割も下落した現在の株価水準で売却すれば約600億円の売却損が出る計算になる。しかし、このまま楽天がTBS株を保有するメリットも少ない。08年12月期決算では保有株を時価評価し、減損処理を行う必要があるからだ。
三木谷浩史社長はこれまでTBS株を長期保有する考えを表明してきたが、このまま経営権を握れず、提携のメリットも見出せない現状では、株式買取請求権の行使が「損失覚悟の売り逃げのチャンス」(市場関係者)であるのは間違いない。
認定放送持ち株会社は08年4月の改正放送法の施行で認められた規制緩和の新制度。民間企業が複数の民放局を支配することを禁じた「マスコミ集中排除原則」を緩和し、一定の条件を満たせば、総務相が放送局の純粋持ち株会社を認定できるようになった。その下にキー局はじめ複数の放送局を子会社として傘下に置くことができる。
「公正価格」めぐり長期戦展開か
株主総会で、認定放送持ち株会社移行のような組織再編の特別決議に反対した株主には、会社法のルールで、保有株を買い取ってもらう権利が発生する。これは反対株主の利益を守るため、保有株を「公正な価格」で買い取るよう求めることができるというものだ。
問題は買い取り価格の決定だ。現行の会社法には「公正な価格」を決めるルールは存在しない。楽天が買い取りを請求するとすれば、09年4月1日の認定放送持ち株会社移行前の20日前から前日までとなる。TBS株価の低迷が続き、楽天が権利を行使したとしても両社が「適正価格」で折り合うとは考えにくい。その場合は法廷で「公正価格」を決めることになるとみられ、最終決着まで長期戦も予想される。