大阪・堺市の図書館に約5500冊所蔵される、男性同士の恋愛を題材にした「ボーイズラブ(BL)」と呼ばれる小説について、図書館側が18歳未満への貸し出しを認めていることが明らかになった。
08年8月から未成年への貸し出しを制限していた
問題の発端は、BL小説が堺市立の4図書館で書棚に置かれていたことに対して、市民から「セクハラではないか」「子ども悪影響を与える」などといった廃棄を望む声が相次いだことだ。2008年7月には、利用者から、「男性同士が抱き合っている・キスしている」絵が表紙に描かれているとして、「子どもに悪影響を与えかねない本を図書館に置くものとしてふさわしくない」と言った声も寄せられていた。
堺市によれば、BL小説は、利用者からのリクエストが多く、これまでに約5500冊を購入。購入金額は約370万円に上る。図書館側は苦情を受けて、書棚で開架されていたものを、書庫に入れ、08年8月から未成年への貸し出しを制限。市側はBL小説について、青少年の健全な育成を図る観点から、「今後は、収集および保存、青少年への提供を行わない」と公式コメントしていた。
こうした市側の対応について、「公共の図書館における図書の排除や検閲はゆるされない」「セクシュアルマイノリティへの偏見を助長する」として、一部の市民グループが反発。東京大大学院・上野千鶴子教授らも賛同し、08年11月にはBL小説の廃棄差し止めの住民監査請求が申し立てられた。
市図書館側は11月14日に一転して、BL小説の線引きが難しい、大阪府条例の「有害図書」にあたらない、として未成年者へのBL小説の貸し出しを認める決定を下していた。
市中央図書館はJ-CASTニュースに対し、
「BL図書は一般小説の一部としてリクエストに応じて購入してきたが、『ボーイズラブ』というジャンルの線引き自体が難しい。また、性表現が過激と言っても、過激なものはどこからか、という判断も難しい。社会通念上、青少年の閲覧には配慮すべきものもあるが、18歳未満への貸出を制限する法的根拠はない」
と説明する。
同図書館によれば、08年8月からの貸し出し制限については「指摘を受けて図書館での扱いを検討するため」に行ったとしている。