米国の「ペイデイ・ローン」は年利600%もある
逆に言うと、「返済能力が不確実で長期間借りたい」という人に対しては、貸金業者はたとえ年利30%であっても貸すことはできない。貸金業者もビジネスなのだから、返済能力に欠ける人に「高利で無理やり貸し込む」ようなことを、まともな業者がするわけがない。むしろ、上限金利を下げ過ぎたことにより、悪徳業者が入り込むスキをつくってしまった、というのが今の実態だ。
米国で日本のサラ金に似たものとして、「ペイデイ・ローン」というのがある。これはペイデイつまり給料日に返済させるというローンだが、年利に直すと400%とか600%といったとんでもないものも多く(「トイチ」よりも高い!)大きな社会問題となっている。あるいは日本でも質屋で借りた場合は担保付きにもかかわらず年利109.5%まで認められている。
筆者の常識からすると、これらの年利100%超というのはさすがに高すぎだと思う。そこには無知な消費者につけこんで金利をたくさん取ってしまおうという魂胆がうかがえる。
しかし、現在の小口無担保融資の上限金利(年利)20%というのはあまりにも低く、結果として短期資金を必要とする多くの個人や零細企業を干あがらせることにつながっている。
政府は銀行の貸し渋りに対して「断固たる措置で望む」と言っている。しかし弱者を最も苦しめている貸し渋りは小口無担保融資での非現実的な金利制限によって生まれたものだ。政治家の猛省を促したい。
++ 枝川二郎プロフィール
枝川二郎(えだがわ じろう)国際金融アナリスト
大手外資系証券でアナリストとして勤務。米国ニューヨークで国際金融の最前線で活躍。金融・経済のみならず政治、外交、文化などにもアンテナを張り巡らせて、世界の動きをウォッチ。その鋭い分析力と情報収集力には定評がある。