アナログ・デジタル同時放送延びると大幅コストアップ
一方、広瀬氏は、08年11月の記者会見では「(停止を延長するための)法改正の時間がない」とも述べている。それ以外にも、「放送局のアナログ設備更新が、停波を前提に計画されている」という事情もある。つまり、現状のアナログ・デジタルの同時放送の期間が延びると、テレビ局にとってはコストアップに直結する。業界にとっては「もう、停波はやめられない。後戻りはできない」というのが内実だ、との見方もできそうだ。
そうなると、問題になってくるのは、アナログ波が停波したあとの「テレビ難民」の発生をいかにおさえるかだ。
総務省では、09年度からの2年間で計400億円を投じて、生活保護世帯120万世帯に、デジタル放送受信用のチューナーを無償配布することになっている。さらに、政府・与党は08年12月になって、チューナーの対象をNHK受信料の全額免除世帯(障害者世帯など260万世帯)に広げる方針を打ち出し、さらに200億円を投じることになる見通しだ。
総務省は08年6月時点で、「地デジの完全移行に必要な予算規模は、今後数年間で2000億程度」との見通しを示しているが、このとおり計画が進むかどうかは不透明な情勢だ。