金融危機で企業の資金繰りが悪化していることに対応して、日銀は新たな資金繰り支援策を決めた。金融機関への資金供給を拡大し、金融機関から企業に回る資金を増やして、「貸し渋り」の緩和を見込む。ただ、金融機関は業績悪化で融資に慎重な姿勢を強めており、効果に懐疑的な見方も根強い。
大企業も社債やCPが難しくなり、銀行に駆け込む
日銀は企業が金融機関向けに発行した社債やコマーシャルペーパー(CP)を金融機関から担保として受け取り、資金を供給している。2008年12月2日決めた新たな支援策は、金融機関が差し出す担保の範囲内なら必要な資金を低利・無制限で供給するというもの。担保として認める社債やCPの格付け基準を従来の「A格相当以上」から1ランク下の「トリプルB格以上」に緩和する。
決済やボーナス支給などで企業の資金需要が高まる年末と年度末に向けた時限措置。日銀が企業の資金繰り支援に絞った資金供給策を打ち出したのは、日本が金融不安に見舞われていた98年以来、10年ぶり。日銀の白川方明総裁は新たな支援策で金融機関への資金供給が3兆円程度見込めると明らかにし、「金融機関の融資を後押しする」と説明した。
白川総裁が「中小・零細企業で資金繰りが悪化しているほか、大企業でも市場での資金調達環境が悪化している」と警戒感を表明したように、国際金融市場での緊張の高まりの影響は日本にも波及している。
10月の全国の銀行の融資残高は前年同月比2.5%増と伸び率は16年ぶりの高さとなった。金融市場の混乱で大企業が社債やCPによる資金調達が難しくなり、銀行の融資に駆け込んだからだ。