「短期的な利益最大化へとシフトしがち」
ただ、日本では、正社員の雇用調整に時間と金がかかるというネックがある。終身雇用制度自体が変わらないためだ。
ジャーナリストの財部誠一さんは、日経BPネットの2008年12月12日付コラムで、正社員を一方的に解雇できない労働法制を批判。倒産の危機であっても、割増退職金を払う希望退職の募集しかできないのはおかしいとして、セーフティネット構築と合わせた法改正を唱える。「需要急減時の雇用調整は世界の常識だ」として、このままでは「激しい国際競争にさらされている日本企業が、いずれ日本を見捨てるのではないか」と指摘している。
しかし、株主利益重視の雇用調整に、欠点がないわけではない。前出の経済ジャーナリストは、「短期的な利益最大化へとシフトしがちで、社員のモチベーションが下がったり、リストラで技術が伝承されなくなったりする弊害もありえます。社員を守ることにはメリットもありますし、ケースバイケースですね」と話す。
ソニーの中鉢良治社長は、朝日とのインタビューでは、リストラを進めるだけでなく、テレビやゲームなど赤字でも成長が見込まれる分野には積極的に投資する考えを示した。これに対し、経済ジャーナリストは、「具体的にどういう製品を売るかについての方針がありません。薄型テレビは売れなくなっているのに、競争の激しいところで勝てるのか、技術や製品の方向性が見えてこない。長期的戦略も持ち合わせないと、社員のモチベーションが下がり、投資家もゆくゆくは評価しないことになるでしょう。コストカットして、お金を編み出すだけではダメなんですよ」と手厳しい。
雇用をどういう場合に守るかなど、今後は幅広い議論が求められている。