漢字の教養本「読めそうで読めない間違いやすい漢字」(出口宗和著)がどういうわけだか売れている。2008年1月発売だが、08年秋からは急速に売り上げを伸ばし、教養本としては異例のロングセラーにのしあがった。麻生首相が「漢字読み間違い」を連発した時期にちょうど重なることもあり、発売元でも「その影響もあるだろう」と話している。
ここ1か月くらいはいくら本を作っても足りない
「読み間違い」が後押し?漢字の教養本が好調だ
「読めそうで読めない間違いやすい漢字」は2008年12月現在で発行部数が16万部に達した。紀伊國屋書店の08年12月08日~12月14日の「単行本 週間ベストセラー」でも11位にランクインしている。
同書は、「誤読の定番」と言われる読み間違いやすい熟語から、漢字検定1級レベルの熟語や固有名詞まで揃えている。漢字が並んだページの裏に正しい読み方と簡単な解説が書いてあるという構成だ。税込みで500円という「ワンコイン」で買える安さも魅力だ。
発行元の二見書房によれば、08年1月の発売から順調に売り上げていたが、08年秋に北海道にある紀伊國屋書店で、店独自のポップ(札)をつけて平積みで販売したところ、大きく売り上げを伸ばしたという。その後、「ブーム」は全国的に広がり、「ここ1か月くらいはいくら(本を)作っても足りないくらい」という、教養本としては未曾有(みぞう)の人気だ。
08年秋に入ってから、麻生太郎首相が漢字の読み間違いを連発。10月15日の参院予算委員会で、いわゆる河野談話について「ふしゅう(踏襲)するというものであります」と答弁。11月17日の衆院本会議でも、「私は基本的に、ふしゅうして参ります」と述べている。11月12日には、四川省の地震について「みぞうゆう(未曾有)の自然災害」と述べ、「これだけはんざつ(頻繁)に両首脳が往来したのは、日中関係史上過去に例がありません」と、誤読を繰り返した。
「前場」は「恥をかかないための入門編」に掲載
漢字の頻繁な誤読はテレビ・新聞で「首相の資質」の問題として大きく取り上げられ、08年12月に入ってから支持率が20パーセント台前半までに落ち込んだ要因の一つとも言われている。
「あれが100パーセントということはないが、きっと(好調な売り上げの)一つの要素ではあるだろう」
と二見書房の担当者は話す。首相の漢字誤読がすくなからず漢字本の売り上げを後押ししたかたちだ。
麻生首相は「経済通」とも言われる一方、証券取引の前場を「まえば」と読んだこともあった。ちなみに同書では、「前場(ぜんば)」は「恥をかかないための入門編」に掲載されており、「まえばと読んだ人は株を知らない」という解説が付されている。