株式相場がよければ表面化しなかった
「マドフ・ファンド」に資金運用を任せて被害を被ったプライベートバンクや財団・基金は少なくないようだが、いまのところ米国の大手金融グループの名前は見あたらない。9月に経営破たんしたリーマン・ブラザーズの欧州・アジア部門を引き継いだ野村HDも、「(その分は)わからない」としている。
なぜ、米大手の金融グループは騙されなかったのか。国際金融アナリストの枝川二郎氏は、「米国内では悪い評判が流れていて、そういった情報を持っていたのかもしれない」と推測する。「ファンドの監査体制など、運営に疑問をもっていた投資家は少なからずいた」(前出の外資系証券の幹部)との指摘もある。
マドフ元会長の威光もあって「ねずみ講」式にお金を集めていたファンドも、金融危機の影響で株式市場が悪化、新しい資金が集まらなくなったことで事件が露見した。マドフ元会長としては「相場が反転すれば資金が集まり、まだ損失を隠せた」と思っていたに違いない。それが隠し切れなくなった。
枝川氏は「相場が悪くなると、こういった悪事は隠し通せない。限界に来ていたんでしょうね」と話す。運営実態がよくわからないファンドは世界中にまだ存在する。ファンドの悪事が、まだ炙りされる可能性があるわけだ。