株券の電子化しないと「不利」で面倒になる
株券の電子化に応じない場合でも、持っていることが「違法」というわけではなく、所有者本人の名義に書き換えておかないと、後日名義の書き換えで面倒が生じたり、株式を売りたいタイミングで売れなかったりする。
なかには「株券を記念に持っていたい」という個人投資家がいるとのことで、こうした場合も投資家の権利は信託銀行の「特別口座」に記録されている。もちろん、手元の株券にはなんの経済的価値もない。
こんな個人投資家に困惑するのは上場企業だ。「特別口座」にかかる費用は企業が負担する。タンス株が多いほど、企業の負担が大きいことになる。
12月12日をタンス株の持ち込み期限としている三菱UFJ証券は、11月にはじまった日本証券業協会のテレビCMの効果もあってか、「夏場に比べて1日2、3倍は持ち込まれているようです」(広報室)と、駆け込みの対応に追われている。「12日までに持ち込んでもらえれば、責任をもって1月5日のスタート時に間に合わせます」という。
たとえば名義を書き換える場合でも、遺産相続によるものであれば相続証明の手続きが必要になるなど手間がかかるので、早めに手続きを終えることで当日はスムースに移行しようというのだ。
名義の書き換えをしないまま、株券の電子化を迎えた場合には、名義株主と株券を提出し忘れた株主が共同で請求する方法や、1年以内に株券と受渡証明書などの書類を提出する方法など、「救済」措置がある。
では、「売らない」と決めてタンス株のままにした投資家が、どうしても売りたくなったらどうなるのか――。「特別口座」では株式の売却ができないため、証券会社に口座を開設し、信託銀行に株式の振り替え指示をする。そうすれば、売却できる。