大学の女性研究者採用優遇にも反発出る
一方、施策を進める厚労省の職業家庭両立課では、こう理解を求める。
「職場では回りの負担が重くなるかもしれませんが、施策では、職場で子育てへの理解を進めるためのメッセージを出していきます。不公平に思わないよう職場の風潮を変え、支えるのが当たり前と思える社会にしていこうということです。男性も育児休暇を取りやすくして、女性の負担が少なくなり、早く仕事に戻ることができると考えています。テレワークが万能であるとは思えません」
女性の社会進出が定着するに伴って、「逆差別」は、関心の強いテーマになっている。文科省が2009年度から大学の女性研究者採用に補助金を出す方針を朝日新聞が08年10月5日に報じたときも、ネット上では反発の声が広がった。
文科省の施策は、女性研究者を採用・養成する理系大学などのプログラムを10研究機関ほど選び、1億円を上限に5年間補助するものだ。研究者1人に付き、ここから研究費などを3年間出してもらうという。しかし、もし業績が上がらなかったら、男性差別が原因と批判される恐れもありそうだ。
前出の田澤さんは、「女性を優遇すればいいのではなく、かえって逆効果になりうると思います。女性の立場が弱くなるとすれば残念ですね。やはり男女は公平になるようにすべきです」と指摘する。
これに対し、文科省の基盤政策課では、「逆差別との批判は認識していますが、欧米に比べて女性が活躍する環境が整っていない現状があります。女性を生かし切れていないため、研究の多様性も失われています。そこで、研究費をつけ、出産、育児を経験しても活躍できる仕組みを作ってもらうのが狙いです。各大学は、成果を出せる女性研究者を厳選してもらい、研究者には、責任を持って頑張っていただくしかないと思っています」と話している。