生命保険主要13グループの2008年度上半期(4~9月)業績報告(決算)が出そろった。金融危機に伴う株価急落で保有する株式の含み益が急減。保険不払い問題の後遺症を抱える中、米保険大手AIGの経営難や大和生命保険の破綻など、業界を取り巻く環境は厳しさを増しており、各社とも「生保不安」の再燃払しょくに追われている。
アリコと三井生命、アクサ生命保険が赤字転落
日本生命保険や第一生命保険など13グループの9月末時点の有価証券含み損益を合算した含み益の総額は前年同期より約10兆円少ない約5兆2000億円。米AIG傘下のアリコジャパンや三井生命保険、朝日生命保険などが有価証券の含み損を抱えた。
この結果、財務の健全性を示すソルベンシーマージン比率は、13グループの傘下生保すべてで前年同期より低下した。健全基準である200%は全グループとも上回った。三井生命と朝日生命は600%台前半だった。
生保各社は保険金不払い問題で契約者の「生保離れ」を招き、08年3月期決算まで新規契約が低迷。08年度上半期はようやく回復の兆しがうかがえたが、これまで大幅に落ち込んでいた反動に過ぎない。むしろ契約者つなぎとめのため、営業職員を総動員して契約者の家庭を訪問したことで人件費が膨らみ、本業のもうけを示す基礎利益が圧迫された。
経常赤字に転落したのはアリコと三井生命、アクサ生命保険。アリコは一般企業の売上高にあたる保険料等収入は国内大手4社に次ぐ位置を維持したが、保有するAIG株式の評価損2235億円を計上し、2278億円の大幅な経常赤字を計上した。最終(当期)損益も1410億円の赤字で、アリコが上半期業績の公表を始めた97年以来、赤字は初。AIGの経営危機に直撃された格好だ。
一方、三井生命は126億円の経常赤字。財務基盤強化のため今年3月までの株式上場を目指していたが、市場の混乱を理由に延期。金融危機は深刻化し続けており、いつ上場できるのかのめどすら立ちそうにない。
株価低迷が続くと、体力の弱い生保は一段と厳しい
逆ざやの重荷で中堅生保が次々と破綻した2000年前後の「生保不安」再燃も懸念されるが、「当時は自己資本が1兆円だったが、今は2兆円を超しており、(危機は)十分コントロールできる範囲」(第一生命)、「財務基盤は強く、厳しい局面は乗り切れる」(日本生命)などと大手は強気の姿勢を示した。
また、アリコは526億円、三井生命は500億円、朝日生命は350億円の資本(基金)増強を発表し、危機を乗り切りたい構えだ。だが、9月末に1万1000円台だった日経平均株価は10月以降、一段と下落し、一時は7000円を割った。最大手の日本生命ですら、10月末時点水準での有価証券含み益は9月末より2兆3000億円少ない1兆円に急減している。来年3月まで株価低迷が続くと、体力の弱い生保の経営環境は一段と厳しさを増すことになる。