経済の低迷と株価の大幅な下落によって、メガバンクをはじめとする金融機関が収益を大きく減らすなかで、新規参入銀行のセブン銀行が絶好調だ。セブン-イレブンやイトーヨーカ堂といったセブン&アイグループのスーパーなどに「間借り」してATMを設置、ATM利用の手数料収入を伸ばしている。再び不良債権問題に頭を痛める既存の銀行や、資金運用の失敗などが足を引っ張る他の新規参入銀行を尻目に、ひとり勝ちだ。
ほぼ全額を国債で運用する手堅い運用
セブン銀行の2008年9月中間決算によると、最終利益は前年同期に比べて45.5%増の90億円と伸ばした。メガバンクなど、既存の銀行が軒並み減収減益となるなかで、ひとり気を吐いた格好。ATMの利用に集中した独自のビジネスモデルが当たった。
セブン銀行のもうけの源泉であるATM利用手数料。その仕組みはこうだ。提携した銀行のカードホルダーがセブン銀行のATMを使った場合、ATM利用手数料はいったん提携した銀行に入り、その後提携銀行からセブン銀行に利用件数ごとの手数料が入る。セブン銀行と提携した銀行との手数料水準は提携先によって異なるが、提携する金融機
関が増えてATMの利用件数が増えれば、おのずと手数料収入も増えるというわけだ。セブン銀行は9月末時点で、6か所の有人店舗と1万3307台のATMを設置しているが、基本的にはセブン-イレブンやイトーヨーカ堂の店内に併設している。つまり、セブン銀行は自前で店舗を持たない強みがある。決算資料によるとATMにかかる土地建物機械賃借料は05年度の75億円をピークに06年度67億円、07年度は47億円に抑えている。
他行が大きな損失を負った資金運用部門の傷も浅い。9月中間期の有価証券運用は08年3月期と比べて8900万円減少し888億円となっているが、同行はほぼ全額を国債で運用。それも、「ATMに入れる現金を日銀から機動的に調達するための担保として保有しているもの。いわゆる資金運用を目的としている有価証券はない」(セブン銀行)と説明する。
親会社とセブン銀行の信用力の一体性が高まる
米格付け会社のスタンダード&プアーズは「セブン&アイグループにとって金融事業の重要性が強まっていることに加えて、グループ収益への貢献度や規模の面でも相当程度に成長しており、親会社とセブン銀行の信用力の一体性が高まっている」と評価する。
セブン-イレブンなどに設置してきたATMがそろそろ飽和状態になってきて、最近は「駅ナカ」や空港、集客力の高い商業施設などへの出店や、野村証券や日興コーディアル証券、新生銀行などの他の金融機関のATMの肩代わりや共同運営を進めている。
テナント料が発生すれば、その分費用がかさむのでセブン銀行にとってはマイナスになる。
一方、既存の金融機関にとって、景気悪化や米国発の金融危機によって収益が上がらなくなれば、自行が抱えているATMの設置費用もまた重荷になる。既存の銀行がATMを自前で抱える負担に耐えられなくなる、あるいは自前で所有する必要がないと判断すれば、セブン銀行にATMの肩代わりや共同運営を求める可能性も増えてくる。
設置するATMの台数が増えてセブン銀行に入る手数料収入も増え、この商法まだまだ拡大しそうだ。