新聞業界の不況を説明する際に「新聞・テレビの不況は、広告がネットに『引っ越し』したのが原因」との声が多いが、そのネット広告市場にも頭打ち感が出てきた。国内では主要インターネット企業の過半数の業績が悪化しているほか、米国市場でも、ここ1年ではオンライン広告市場の縮小が続いている。ネット企業の中には「景気が回復すればネット系メディアに広告は戻る」との声もあるが、予断を許さない状況だ。
米国のネット広告初の前年比減少
このほど出そろった主要インターネット企業12社の08年7-9月期(そのうち2社は6-8月期)の決算の最終損益を見ると、5社が改善した一方で。7社が悪化している。内訳を見ていくと、ヤフーや「モバゲータウン」を運営するDeNA(ディー・エヌ・エー)、ミクシィなどのポータル・SNS各社は増収増益を達成しているものの、広告代理店の業績悪化が目に付く。例えばデジタル・アドバタイジング・コンソーシアム(DAC)の最終利益は前年同期比33%減の7000万円にまで落ち込んだほか、サイバー・コミュニケーションズ(CCI)は20億円の最終赤字に転落している。
2008年2月に電通が発表した「日本の広告」によると、インターネット広告費は前年比24.4%増の6003億円(そのうち広告制作費が同18.1%増の1412億円)。いわゆるマス4媒体(テレビ、新聞、ラジオ、雑誌)」が苦戦する中、「ネット広告に限っては好況」と言われてきたが、この傾向に、かげりが見えていることがうかがえる。
米国の状況をみると、すでにネット広告の世界でも「景気後退」が進んでいる様子なのだ。例えば新聞業界を見てみただけでも、米国新聞協会(NAA)のまとめによると、07年7-9月期には7億7303万ドル()に達していたオンライン広告費が、1年後の08年7-9月期には7億4984万ドルと、3%減少している。03年の調査開始以来、前年同期比ベースでは初めて減少に転じた。
米ポータルの状況を08年7-9月期ベースで見ても、ヤフーの純利益は前年同期比64%減の5400万ドル。一方、グーグルの純利益は同26%増の13億5000万ドルで、好調に見える。ただ、採用人数を前年同期比25%に減らすなどのコスト削減策が寄与したとの見方が有力だ。さらに、同社の売り上げの3分の2が、自社直営サイトからのもので、こちらは前年同期比34%増の36億7000万ドル。同社サイトは検索連動型広告で収入を得る仕組みなので、逆の見方をすれば、検索連動型ではないバナー広告などの構造的な不調ぶりが浮き彫りになる形だ。