日本の調査捕鯨関係者は、米反捕鯨団体シー・シェパードが今回どんな妨害をするのかと困惑している。毎回手を変えており、前回は薬品投げ入れなどで妨害した。今回は船にヘリポートや格納庫を建造したという話もあるほか、ハリウッド女優も乗船させており、関係者は「妨害正当化の宣伝などに使うのでは」とあきれている。
船にヘリポートや格納庫を建造、2隻目を用意?
捕鯨船出港を伝えるグリーンピースのサイト
捕鯨への抗議では、特に過激な活動をしているシー・シェパード。うちメンバー4人が前々回、日本の調査捕鯨船にロープを絡ませるなどの危険な行為をした威力業務妨害の疑いで警視庁が逮捕状を取り、3人が国際手配されている。
シー・シェパードは前回も、臭いのある薬品らく酸入りのビンを投げ込んだり、メンバーを捕鯨船に侵入させたりといった行為を繰り返した。今回の調査捕鯨でも、妨害続行を宣言しており、2008年12月4日、オーストラリアのブリスベンからスティーブ・アーウィン号を出港させた。
報道によると、豪政府は今回、すでに国際法違反の証拠がそろったなどとして、監視船派遣を見送るという。また、環境保護団体グリーンピースは、日本で起きた刑事事件の裁判に専念するとして、今回は抗議船を出さないとしている。つまり、捕鯨への抗議活動で目立つのは、シー・シェパードぐらいとなりそうなのだ。
しかも、豪政府やグリーンピースの対応に反発し、シー・シェパードは戦闘意欲を高めているというのだ。新聞各紙によると、寄付金の倍増にも成功し、船にヘリポートや格納庫を建造したほか、2隻目を用意したとの情報もある。
さらに、広告塔にしたとみられるのが、映画「スプラッシュ」の人魚役などで知られるハリウッド女優ダリル・ハンナさん(48)だ。各紙によると、ハンナさんは、アーウィン号に乗船し、1週間ほどその活動に協力する見込み。「人は良い戦いをしている人を支持すべきであり、私がすることはシー・シェパードと一致団結することだ」と話したという。
宮本武蔵並み二刀流「ムサシ作戦」とは何だ
シー・シェパードの不穏な動きに警戒を強めるのが、日本の調査捕鯨船団だ。前回は待ち伏せによる妨害を受けそうになったため、船の出港日時や場所も明かさないピリピリぶり。グリーンピースによると、2008年11月17日に広島県の因島を出港したというが、水産庁遠洋課などでは、「セキュリティ上の問題から、お答えできない」と話すのみだ。妨害への対応策や防護設備についても同様という。
ところで、シー・シェパードは、体勢強化や女優乗船で何をしようとしているのか。 ヘリポートや格納庫については、同課では、「ヘリポートは、海の上から捕鯨船を見つける偵察ヘリの発着場所にするのでしょう。格納庫は、暴風雨などに備えてヘリを格納するのに使うはずです」。
では、2隻目の船は? 「まだ聞いていません」としながらも、報道された「ムサシ作戦」に関係があるというのだ。「あくまで想像ですが、2隻だと宮本武蔵の『二刀流』だとして、日本人相手なので使ったのでは」
女優のダリル・ハンナさん乗船については、1週間という情報から、「出港のときにスピーチしたり、手を振ったりして、注目してもらうためでは。南極海まで行けないので、オーストラリアなどの港で補給のときに降りるのだと思います」。
ただ、ハンナさんは、ハリウッド映画「キル・ビル」でだまし討ちをする殺し屋役を演じたりもする。毎回奇襲を繰り返すシー・シェパードだけに、南極海まで乗船といった「だまし討ち」はないのか。これに対し、遠洋課では、「確かに、船に強かったり、『免許』があったりするかもしれません。ウソかもしれませんし、何とも申し上げられません」 しかも、今回も前回同様、テレビクルーが乗り込んでいるというのだ。捕鯨船を出す共同船舶の常務も、こう困った様子をみせる。
「アメリカのテレビで、シー・シェパードの船長が『日本側から銃で撃たれた』と、防弾チョッキの下から銃弾を見せていました。こちらは音響警告弾を7発空へ投げただけなのに、デタラメですよね。そうやると、寄付金が集まりやすいんですね。今回も、女優を使って何をやるんだろうと思うと、頭が痛いですよ」