経営再建中の日本航空(JAL)が、思わぬ形で海外からの注目を集めている。米CNNがJALの西松遙社長兼CEOの「倹約ぶり」を取材、その様子が放送されて、反響を呼んでいる。レポートでは、西松社長が報酬をパイロット以下にカットしたことや、都営バスで通勤している様子が紹介され、「ユーチューブ」に転載された動画のコメント欄に「米国のCEOはJALを見習うべきだ」との声が相次いでいるのだ。
社員食堂の列に並んで会計し、昼食
JALの経営再建の取り組みが注目されている
CNNが東京発でJALについてのレポートを放送したのは2008年11月。西松社長が都バスで出勤したり、社員食堂の列に並んで会計し、昼食をとったりする様子が映し出されている。さらに、ナレーションでは、人件費削減の取り組みを説明する際に、「07年には、西松社長は自分の年収を9万ドルまで減らした。これは、パイロットの稼ぎよりも少ない額だ」などと紹介。
これは、JALが07年2月、07年度から4年間の中期経営計画を発表したのと同時に「社長の年収は960万円(08年3月まで)」「社長室の廃止」「社長は電車通勤」といった取り組みが始まったのを受けてのもの。JAL広報部によると、スケジュール上無理がある時や来客時以外は、原則「電車通勤と社食での昼食」なのだという。
この取り組みに対して、CNNの記者が
「世界でトップ10に入る航空会社のCEOの生活としては奇妙なのでは」
と疑問を投げかけると、西松社長は
「そんなおかしいですかね? I don't think so strange.(そんなにおかしいとは思わない) だと思うんですけど」
と、「至って当然」という様子。
さらに、レポートでは「米国のCEOは、これとは対照的だ」と続く。記者が、米議会で財政支援を求めている企業のCEOの年収が2億『ドル』 (約186億円) にのぼるケースがあることを伝えると、西松社長は
「ドル? In terms of US dollar? (米ドルで?) はぁー。ハハハ」
と、あきれた様子だった。
「この人はすごい」といった西松社長を賞賛する声が多い
レポートが、いわば「米国の高給CEOと日本の質素なCEO」という視点で作られていたということもあり、この動画は11月23日には「JALのCEOは給料をパイロットの給料以下に減らした。他のCEOも彼から学ぶべき!」とのタイトルでユーチューブに転載され、注目を集めているのだ。12月3日19時現在で6万9000回以上が再生され、120以上のコメントが付いている。内容はというと、
「この人はすごい」
「米国では、このような強欲と富にまみれていないCEOは珍しい」
といった、西松社長を賞賛する声が多い一方、
「日本ではCEOは、それほど価値あるものだとは認識されていないので、今回の件も、それほど驚かない」
と、冷ややかな声も散見される。
経営再建に向けての取り組みが思わぬ形で海外で注目された形だが、JALは11月7日に、09年3月期の業績予想(連結)を下方修正したばかり。営業利益は前期比69%減の280億円になりそうだとみられており、「再建は道半ば」といったところ。当分は、この「倹約ぶり」は続くことになりそうだ。