大手銀行6グループの2008年9月中間連結決算は、最終利益が合計で3983億円と前年同期から58%減と04年9月期以来4年ぶりの低水準にとどまった。金融危機による不良債権急増と株安のダブルパンチを浴び、米欧金融機関に相次いで出資した「救済役」から一転、自らの身を守るために大型増資に奔走する羽目に陥っている。
株価の低迷が続けば損失拡大は必至
中間決算での6グループ合計の不良債権処理費用は7220億円と前年同期の約1.9倍に急増し、保有株式の損失処理でも計2944億円と前年同期の約1.4倍に達した。最終利益が前年同期比7割減の945億円に終わったみずほフィナンシャルグループ(FG)。積極的な収益拡大を図る「投資銀行宣言」を旗印に掲げてきたが、前田晃伸社長は「投資損失宣言になってしまった」とぼやいた。
6グループは08年3月期決算を発表した5月、「市場混乱のヤマは越えた」と踏んで、前年同期を上回る計9550億円の最終利益を見込んだ。だが、金融危機が長期化し、日本にも本格上陸。景気後退と株安が起き、中間決算の大幅悪化を招いた。大手行は危機の早期収束で業績のV字回復を見込んでいたが、甘い期待が打ち砕かれた形だ。
しかも危機の影響が表面化するのはこれからが本番。9月の米リーマン・ブラザーズの破綻以降、実体経済の悪化が急速に進んでおり、6グループの09年3月期の不良債権処理費用は総額1.2兆円と前年同期の約3倍に達する見通しだ。また、9月末の日経平均株価は1万1259円だったが、10月末には一時7000円を割った。株価の低迷が続けば、09年3月期の損失拡大は必至だ。
欧米救済のはずが一転、資本増強に走る
巨額の赤字決算が続出した米欧金融機関に比べ、邦銀は金融危機による傷が浅かったため、今年に入ってから相次いで米欧への出資に乗り出していた。90年代のバブル崩壊後に海外業務を大幅縮小してきただけに失地回復の狙いがあった。だが、ここにきて足元に火が付き、あわてて資本増強に走っている。
三菱UFJFGは9月末、米モルガン・スタンレーに約8600億円の出資を決めたが、その後の株価急落で自己資本比率が10%を割り込む恐れが出てきたため、急きょ1兆円の増資を決定した。1月に米メリルリンチに1300億円を出資したみずほも最大3000億円規模の増資を発表。6月に英バークレイズに1000億円出資した三井住友FGも4000億円規模の増資で調整している。
ただ、三菱UFJの増資は市場に出回る普通株6000億円を含むため、1株当たりの利益の希薄化が嫌気され、増資報道後の株価は2割も急落した。畔柳信雄社長は「いずれ実体経済が回復すれば、モルガンへの投資は成果が出る」と強調する。だが、市場では「危機収束の兆しは見えず、巨額出資に見合う成果を出せるかは目算が立たない」と冷ややかな見方も広がっており、大手銀の先行きへの不透明感は、しばらくは晴れそうにない。