欧米救済のはずが一転、資本増強に走る
巨額の赤字決算が続出した米欧金融機関に比べ、邦銀は金融危機による傷が浅かったため、今年に入ってから相次いで米欧への出資に乗り出していた。90年代のバブル崩壊後に海外業務を大幅縮小してきただけに失地回復の狙いがあった。だが、ここにきて足元に火が付き、あわてて資本増強に走っている。
三菱UFJFGは9月末、米モルガン・スタンレーに約8600億円の出資を決めたが、その後の株価急落で自己資本比率が10%を割り込む恐れが出てきたため、急きょ1兆円の増資を決定した。1月に米メリルリンチに1300億円を出資したみずほも最大3000億円規模の増資を発表。6月に英バークレイズに1000億円出資した三井住友FGも4000億円規模の増資で調整している。
ただ、三菱UFJの増資は市場に出回る普通株6000億円を含むため、1株当たりの利益の希薄化が嫌気され、増資報道後の株価は2割も急落した。畔柳信雄社長は「いずれ実体経済が回復すれば、モルガンへの投資は成果が出る」と強調する。だが、市場では「危機収束の兆しは見えず、巨額出資に見合う成果を出せるかは目算が立たない」と冷ややかな見方も広がっており、大手銀の先行きへの不透明感は、しばらくは晴れそうにない。