純米酒やアーティストを応援 ファンが出資「ファンド」が人気

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   日本酒好きの間で、「純米酒」を広めることを目的とした投資が注目を集めている。配当金だけを目当てにした一般的な投資とは異なり、好きなものを応援したいという「ファン心理」から成り立っている。「ブックファンド」やアーティストを応援するファンドもあり、どれも元本割れしても納得できる内容になっているのも人気の理由だ。

配当金以外に、1口につき純米酒6本もらえる

   全国に流通している日本酒のうち2割にも満たない「純米酒」。原材料は米と米麹のみを使用しているため通常の日本酒に比べて原価が高くなり、製造元にとって大きな負担となる。そのため造る蔵が減っている。そこで全国の22蔵が集まり、純米酒を広める目的で、「全量純米蔵を目指す会」が立ち上がった。その活動を支えているのが、純米酒ファンが出資する「全量純米蔵ファンド」だ。

   銘柄別に1口5万円から。運用期間は3~5年で、ファンドにより異なる。数年間の熟成期間後に売れれば配当金がもらえ、特典もある。出資者には対象となる純米酒や酒粕が毎年送られて、蔵の見学もできる。例えば、「全量純米蔵ファンド2008」の場合、1口につき純米酒(300ミリリットル×6本)がもらえる。金銭目的だけでなく、「うまい酒との新しい出会い、体験が得られる」と利用者に好評だという。

   ファンドの募集、管理業務などは、業務委託を受けたミュージックセキュリティーズ(東京都千代田区)が行う。純米酒は通常の日本酒よりも熟成期間が長いため、蔵元には負担がかかる。在庫が多くなり、小さな蔵の場合は金融機関の融資を受けられないという問題も起こっていた。

   「全量純米蔵を目指す会」の中心となっている酒造会社、神亀酒造と出会い、ファンドが誕生した。ミュージックセキュリティーズの担当者は、

「食の偽装問題もあり本物志向が強まっている中、原材料にこだわって造る純米酒市場は右肩上がりです。投資への注目も高まっていて、08年9月から10月末まで3350万円の大口の募集をかけましたが、400人以上の応募がありました。12月から新たなファンドの募集をかけます」

とPRする。

   同社は「音楽ファンド」も運営している。CDの制作・販売に必要な費用や宣伝費用などを1口1万円の小額単位で募る。売上げに応じて得られる分配金のほか、オリジナルDVDのプレゼント、ライブへの招待、CDジャケットのクレジットに名前が記載されるなどの特典がある。現在、48本のファンドが進行中で、投資家の多くが30~40歳代の音楽ファンだ。

   一方、こうした「応援型ファンド」にも元本割れのリスクがある。

「元本保証はしていませんが、もともと利回り目当てに投資するというよりは、気に入ったアーティストを応援する目的で参加する人が多いようです」

企業がブランディングの一環として出版する「ブックファンド」

   本を対象としたファンドもある。英治出版(東京都渋谷区)は、出版に必要な費用の出資を著者や訳者の関係者から募る「ブックファンド」を導入している。本の企画を審査して「ゴー」が出れば、定価や発行部数といった詳細を決める。1口10万円から出資を募り、目標額に達すると出版する。運用期間は発売から1年。

   企業やNPO団体から企画が持ち込まれることが多く、これまでに51タイトルを出版した。担当者は、

「企業がブランディングの一環として出版するケースが増えています。新聞などに数千万円かけて広告を打っても、掲載期間が短く、十分な効果が得られないことがありますが、本にすれば書店に一定期間は置いてもらえるというメリットがあります」

といい、元本割れしても金銭面以上のメリットがあると訴える。

   個人の持ち込みで成功した例もある。「さおだけ屋はなぜ潰れないのか」の著者である山田真哉さんが同書で有名になる前に、ブックファンドを利用して出版したのが「女子大生会計士の事件簿」だ。発売された02年12月に、「Amazon.co.jp」で和書ランキング総合3位、「ブックファースト」渋谷店でビジネス書3位を記録した。

   今のところ、「ブックファンド」の一般公募はしていないが、将来的には検討したいとしている。そうなれば、出資者の手でベストセラー作品が生まれるのも夢ではないようだ。

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