景気後退にともなって新卒学生の内定取り消しが続出する中、高給で有名な外資系企業が数百万円の「手切れ金」と引き替えに、学生の内定を取り消しているという噂が、まことしやかに流れている。外資金融各社は内定取り消しの事実を否定するが、ネット上では「うらやましい」「この就職氷河期に1年損するのは痛い」などと、さまざまな議論が飛び交っている。
週刊誌「AERA」が東大生の会話を紹介
破綻したリーマン・ブラザーズも「内定取り消し」を否定した
金融不安や景気後の影響が企業の採用活動にも及んでいることは「大学生の『内定取り消し』始まった 理由は『経営が悪化したため』」という記事でも報じた通りだが、これが統計の数値としても反映されだした。厚生労働省は2008年11月28日、08年度に大学や短大を卒業する学生のうち、11月25日現在で302人が採用内定を取り消されていたと発表。07年度の37人に比べると8.2倍に急増している。同省は、事業主に内定取り消しを避けるように指導したり、学生向けの相談窓口を設置したりする、といった取り組みを始めた。
学生にとっては災難としか表現のしようがない「内定取り消し」だが、「外資だけは特別」との見方も相次いでいるのだ。
例えば、週刊誌「AERA」が08年11月10日号で、10月初旬の段階での東大生の会話を紹介。いずれも外資系金融機関から内定の取り消しを受けた学生なのだという。やりとりは、こんな具合だ。
「Mは500万か600万らしい」
「Lは200万だって」
「100万って聞いたけど」
「でも、まだいいよ。Nなんて50万だって」
「それ、安すぎる…」
つまり、外資系金融機関が「内定取り消しと引き替えに、学生に数百万円を渡している」というのだ。いわば、上記の会話は「手切れ金談義」とも言える性質のものだ。
日経MJ(流通新聞)でも、10月20日に
「来春、ある外資系証券への内定が決まっていた大学生は内定取り消しの代償として約300万円を受け取った、といううわさも流れている」
と報じ、「手切れ金説」を示唆している。
「(内定者のなかで)断った人はいない」
実際のところはどうなのだろうか。前出の調査を発表した厚生労働省の職業安定局若年者雇用対策室では
「個別のケースについては把握していません。『民と民』の間の慰謝料のようなお話は、当事者間で決めておられるのでは」
と、「ノータッチ」の立場。東大のキャリアサポート室でも、
「内容取り消しについては、こちらでは聞いていない」
と、外資系に限らず、内定取り消しの波は東大では表面化していない様子だ。
それでは、金融機関側はどうか。
経営破綻したリーマン・ブラザーズ証券にコンタクトを試みると、同社を買収した野村証券に電話がつながり、担当者は
「(内定者のなかで)断った人はいない。それ以上のことは答えられない」
と内定取り消しを否定。メリルリンチ日本証券やゴールドマン・サックス証券でも、
「内定取り消しの事実はない」
と話しており、各社が「手切れ金」はもちろん、内定取り消しさえも否定しているという状況だ。
さらに、「みんなの就活日記」などの就職活動情報サイトにも、これに関連した話題は特に見あたらない。
ただし、2ちゃんねる上では「この前、内定を取消されたんだけど 全員に600万円支給されたわ」などと主張するユーザーが登場。この人物が実際に「手切れ金」を受け取ったかは不明だが、
「生涯収入1000万は下がるな」
「600万貰えるなら取り消されてもいいな
200万程度ならお断りだけど」
「まいとし内定取り消しくらえば、いっしょうくっていける! 」
などと「手切れ金談義」が行われており、憶測が憶測を飛んでいる状態だ。