麻生首相がかつて社長を務めていた親族企業が、地元福岡の有力民放局の株式の買い増しを進め、第3位の大株主に躍り出ていたことが明らかになった。大量保有報告書では、保有目的については「安定株主として長期にわたり保有する」とあるが、同社は麻生首相が第3位の大株主という地位にある企業なだけに、さまざまな憶測を呼んでいる。放送局側は、すでに買収防衛策を打ち出しており、攻防の行方が注目される。
RKB側も買収防衛策進める
「麻生」による株式大量保有が注目されているRKB毎日放送(福岡市)
注目を集めているのは、福岡証券取引所に上場している「アール・ケー・ビー毎日放送」(RKB、福岡市)の株式だ。同局は古くからTBS系列のJNN(ジャパン・ニュース・ネットワーク)基幹局で、自社制作番組の割合が比較的高く、「九州民放の雄」としても知られる。なお、首都圏以外で上場している地上波の放送局は、RKB以外では朝日放送(ABC、大阪市)、中部日本放送(CBC、名古屋市)、新潟放送(BSN、新潟市)の3局のみだ。
一方、RKB株を買い進めていることが明らかになったのは、麻生グループの中核企業として知られる「麻生」(福岡県飯塚市)。2001年までは「麻生セメント」という社名で知られ、麻生首相も1973年から79年にかけて社長を務めた。現在の社長は弟の泰(ゆたか)氏だが、同社の有価証券報告書によると、麻生首相は今でも同社株式の5.13%を保有し、第3位の大株主という立場にある(08年3月31日現在)。
RKBの有価証券報告書によると、07年3月31日の段階では、大株主10社の中に「麻生」の名前はない。持ち株比率10位の肥後銀行(熊本県熊本市)は28万株を持っており、持ち株比率にして2.50%。この段階での麻生の持ち株比率は、それ以下だということになる。
ところが、半年後の07年9月30日の段階では、麻生は51万株を保有。持ち株比率は4.55%で、西日本鉄道(3.03%)や九州電力(2.93%)といった地元有力企業を抜き去り、福岡銀行と並んで3位の座に躍り出ている。
さらに、07年12月には5.13%まで買い進めた。株式の保有割合が5%を超えた場合には、いわゆる「5%ルール」に基づいて「大量保有報告書」を金融庁に提出することが義務づけられており、報告書の提出で麻生のRKB株大量保有が、広く知られるようになった。
麻生はその後も株を買い進め、08年3月31日の段階では6.06%だ。この段階の筆頭株主と持ち株比率2位は、それぞれ毎日放送(MBS、8.84%)と毎日新聞社(8.45%)。麻生があと31万株(2億円弱)を取得すれば、筆頭株主の座に躍り出る計算だ。
一方のRKB側も対策を進めている模様で、08年3月には「当社株券等の大規模買付行為に関する対応策(買収防衛策)」を打ち出し、6月の株主総会で承認されているほか、08年10月には、09年3月末までに、上限で10万株の自己株式を追加取得することを取締役会で決議してもいる。