麻生首相の相次ぐ漢字のいい間違いに続いて、「得意技」とも言える失言が加速している。野党からの批判はもちろん「身内中の身内」である閣僚からも苦言が相次ぐ。支持率低下も目立ち、もはや満身創痍ともいえる状況に限りなく近い。
トウシュウ、ミゾウユウってどんな漢字?
麻生首相の発言には、閣僚からの「苦言」も相次いでいる
麻生首相の最近の「読み間違え例」をざっと見てみただけでも、こんな具合だ。
10月15日の参院予算委員会で、社民党の福島みずほ党首が、いわゆる河野談話について「踏襲されますか」とただしたところ、
「政府の基本的立場というのは、現在も平成5年8月15日の河野官房長官談話をフシュウ(正しくはトウシュウ)するというものであります」
と答弁。11月17日の衆院本会議でも、
「私は基本的に、フシュウして参ります」
と述べている。
11月12日には、四川省の地震について
「ミゾウユウ(未曾有)の自然災害を乗り越え…」
と述べたほか、同スピーチ内で
「1年のうちに、これだけハンザツ(頻繁)に両首脳が往来したのは、日中関係史上過去に例がありません」
記者団に一連の読み違いを指摘されても、麻生首相は
「そうですか、それは単なる読み間違い、もしくは勘違い」
と、憮然として答えるのみだった。
11月19日から20日にかけては、首相就任前から危惧されていた「失言」と「軌道修正」が相次いだ。19 日には、道路特定財源を地方交付税として配分することを明言したが、翌20日には「自由に使えるなら何でもいい。交付税じゃなくてもかまわない」と修正。同日夜には、「軌道修正」との見方を否定した上で、「地方が一番使いやすいお金って何だと思う?」と記者に逆質問。記者が「地方交付税」と答えると、「それが答え」と言って、別の話題に移った。
また、2010年には上場、売却を目指している日本郵政グループ株についても「凍結すべき」と主張、後に「安いときには売らない、ということ」と釈明を迫られた。
「国民の皆様に誤解のないようにご発言いただかないと」
それ以外にも、19日には医師について「社会的な常識がかなり欠落している人が多い。ものすごく価値観が違う」と発言。その後「まともなお医者さんが不快な思いをしたと言うのであれば、申し訳ない」と述べたが、それでも事態は収束せず、20日には日本医師会の唐沢祥人会長が官邸を訪れて抗議。麻生首相は「言葉の使い方が不適切だった」として発言を撤回、謝罪した。
21日になっても、「身内中の身内」であるはずの閣僚から苦言が相次いだ。
「やはり、少し言葉が足らないのか、という気もする。総理という立場もありますし、国民の皆様に誤解のないようにご発言いただかないと」(小渕少子化担当相)
「あの発言は不適切だったのではないか。しっかりと、われわれの本意が伝わるような表現をしなければ」(斉藤環境相)
「話をおもしろく、分かりやすくしようとして、若干適切さを欠く発言をしてしまうことがある」(森法相)
これらの背景について、浅野史郎・前宮城県知事は、
「医師についての発言と、道路などの政策の話とは、次元がまったく違う」
とした上で、「医師発言」については、
「発言があったのは、全国知事会という場。麻生さんはかつて(全国の知事を束ねる)総務大臣という立場にあった。いわば昔の仲間なので、気安さがあったのでは。こういう場面があぶない」
と、脇の甘さを指摘した上で、道路財源や株売却関連の発言については
「元々キチッと決めて言わなかったのが問題。はっきり言って、政策を理解していないということが露呈してしまった」
と、「政策についての不勉強」が元凶だとの見方を示した。
麻生首相は現在、ペルーで行われるAPEC(アジア太平洋経済協力会議)首脳会談のため日本を離れているが、帰国後も逆風はやみそうもない。