2008年10月の携帯電話の契約の純増数は、ソフトバンクモバイルが11万8400件となり、18カ月連続で首位になった。続いて10万2500件のイー・モバイルが初の2位に浮上した。3位はKDDIで4万6700件、4位はNTTドコモで3万2700件だった。一部週刊誌で「11月危機説」がささやかれたソフトバンクは、業界関係者の間で「10月にも首位から転落するのではないか」との観測もあっただけに、首位キープで関係者には安堵感が広がった。
大量満期を迎える08年10月が注目された
携帯電話の純増数とは、毎月の新規契約数から解約数を差し引いた数値。ソフトバンクは06年4月にボーダフォン日本法人を買収して携帯電話事業に進出した後、携帯電話会社が端末価格を割り引くために販売代理店に支払う「販売奨励金」をやめ、06年9月に「スーパーボーナス」と呼ばれる新たな販売手法を導入した。販売奨励金がなくなるため端末価格は上昇するが割賦販売とし、毎月の通信料を安くする仕組みで、現在の基本料980円の「ホワイトプラン」につながる画期的なサービスになった。
端末の割賦販売の多くは24カ月払いのため、丸2年で契約が切れる。このため大量満期を迎える08年10月にユーザーがソフトバンクと契約を更新するか、ドコモやauブランドのKDDIなどに移るか、動向が注目されていた。総務省関係者も「10月に大量の契約が他社に流れるようなことがあれば、拡大路線のソフトバンクの経営もさすがに苦しくなるのではないか」と注視していた。
イー・モバイルが首位をうかがう勢い
ソフトバンクは電波や基地局などの問題から、ユーザーの間で「ドコモやauに比べてつながりにくい」との不満の声がある。販売奨励金の廃止とホワイトプランのような料金設定も他社が追随したため、ソフトバンクの優位性が薄れたのは事実で、「11月危機説」がささやかれる根拠の一つになっていた。これに対して、孫正義社長は「ホワイトプランで家族割引などを利用しているユーザーは簡単には離れない」などと反論していた。
いずれにせよ、注目された10月の純増数はソフトバンクが首位を守り、風評を吹き飛ばす形となった。しかし、データ通信カードが好調で、タッチパネル式のスマートフォンなどで攻勢をかけるイー・モバイルが首位をうかがう勢いを見せている。ソフトバンクは首位を守ったものの、純増数は3カ月連続で減少している。ホワイトプランを導入した07年1月から間もなく2年を迎えることもあり、引き続き今後の動向が注目されそうだ。