2009年の年賀状が全国の郵便局などで発売開始となったが、インターネット系のベンチャー企業「メディアインデックス」(東京都渋谷区、 加納伸之社長)が日本初の「無料で出せる年賀はがき」を発売し、新たなビジネスチャンスを狙っている。「無料の年賀はがき」は、ダイレクトメールなどでおなじみの「圧着はがき」(はがして文面を読む方式)の内面に広告を載せ、切手代を無料にする新たなビジネスモデルだ。「官製」の日本郵政に対して、こちらは私製の年賀はがきだが、近い将来、「年賀状は広告付きで無料」が当たり前という時代が来るのかもしれない。
掲載する広告は化粧品や宅配ピザなど
無料で出せる年賀はがきは「tipoca(ティポカ)」と呼ばれる。既にインターネットで予約の受け付けを開始し、「出足好調」という。はがきの片面に広告を載せることで50円が45円に5円割引になる日本郵政グループの「エコーはがき」などは、これまでもあった。しかし、圧着面に広告を載せることで両面が無地のまま使え、利用者の負担がゼロになるはがきは世界でも初めてという。メディアインデックスは特許を申請している。
圧着面に載せる広告は、化粧品や宅配ピザなどで、「正月に使えるクーポン券など年賀状にふさわしい内容になる」という。広告主の企業にとって、郵送の広告はダイレクトメールに他ならない。不特定多数に発送するダイレクトメールは、必ずしも全員に読まれるとは限らないが、「新年に届く年賀状に広告を載せれば開封率が高く、家族内で読まれるなど、スポンサーのメリットが高い」とメディアインデックスはPRする。
1人160枚までで、販売目標は1000万枚
tipocaは同社のホームページから1人160枚まで注文できる。当初の販売目標は1000万枚だが、早くもインターネットのキーワードランキングで「tipoca」が上位を占めるなど、人気ぶりを示している。
日本郵政グループの09年用の年賀状の発行枚数は39億5000万枚。年賀状の販売枚数はインターネットの普及とともに減少傾向にあるのは言うまでもない。ところが、「年賀状が無料になれば、ネット依存度の高い若者たちも年賀状を利用するようになる」と、メディアインデックスはみている。一 方、日本郵政はSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)のミクシィと組み、ミクシィのユーザーがネットを通じて年賀状を仲間に「投函」できるサービスを新たに開始した。09年に向け、ネットと郵便の競争と融合の関係は一段と複雑になりそうだ。