米国発金融危機のあおりを受けて、金融業界の新卒採用にも陰りが見えてきた。とりわけ、大学生のあこがれの的だった外資系金融機関の新卒採用は、米英系を中心に大幅に削減される予定だ。内定取り消しも相次ぎ、「入社2年目で解雇するケースもある」という惨状だという。
辞めてはみたものの、再就職できずに困っている
新卒採用に陰りが。きっかけは株価の大暴落……
入社2、3年で年収1000万円ともいわれ、大学生の就職先として大人気だった外資系金融機関の人材流出が激しい。米シティグループやAIG、スイスの銀行最大手UBSなど、リーマン・ショック以降、欧米の金融機関は生き残りのため、相次いで国の公的資金を受け入れている。それに伴って、はじまったのが大規模な人員削減だ。
本国はもちろん、日本法人や支店も例外ではない。10月に250億ドル(2兆5000億円)の公的資金を注入したシティグループの一員で証券大手の日興シティグループは、「リストラでかなりの人員が辞めている」(ある証券マン)といわれている。
また、9月に経営破たんしたリーマン・ブラザーズの日本法人の事業を引き継いだ野村ホールディングスは約1100人を受け入れたが、英国系のバークレイズに約100人が「移籍」、その他にも100人弱が野村を離れた。
国際金融アナリストの枝川二郎氏は、「いま、移れる人はいいほう。多くが辞めてはみたものの、再就職できずに困っている」と話す。
人員削減では一つの部門を丸ごと廃止してしまうケースがある。「日本のように、きのうまでM&Aをやっていて、明日から為替ディーラーをやれなんていうことはほとんどない」(枝川氏)ので、人事異動もあり得ない。だから、簡単に数十人、数百人を解雇できる。
そんな状況だから、新卒採用はかなり厳しい。枝川氏は、「具体的な人数はわからないが、中途、新卒を問わず外資系金融機関が採用を減らすことは間違いない」という。
たとえば、いま人員削減の矢面に立っている部署はM&Aなどを手がける「投資銀行部門」だが、そこは金融危機が起こる直前までは「花形」といわれた、人員を増強してきた部署。そんな部署を丸ごとリストラしているのだから、増員の余地などあるはずがない。