「先生、私たちの授業料で食っているんでしょう」
一方、慶大の小林節教授は、他大学への特別講義などで、次のようなケースがあったと明かす。
「こんな学生がいたことがあります。私語を注意すると、『先生、私たちの授業料で食っているんでしょう』と。しかし、教師と学生は対等ではありません。だから、『威張るな』と言いました。講義中に帽子を被っていた学生もいました。怒ると、次の時間にはいなくなりますね」
なぜ平気で私語をする大学生がいるのか。小林教授は、こうみる。
「大人が子どもを叱らなくなった、世の中全体の風潮でしょう。高校や予備校で私語を許してきた。その子が大学生になっているということです」
私語対策には、各大学も苦慮しているようだ。
神戸山手大学では、3年前から講義系の主な科目で、座席指定を義務付けている。「仲良しで固まったり、教室の後ろで目が届きにくくなったりすると、私語が増えるんです。学生から『後ろを注意しても静かにしてくれない』と要望があったのがきっかけです」。また、大阪電気通信大学では、2年前にゲーム機「ニンテンドーDS」を授業に使い始めたところ、私語が少なくなり、それもあって拡大導入した。「学生が授業に集中できるようになり、コミュニケーションも活発になった」といい、私語防止には授業の工夫も大切なようだ。
慶大の小林教授は、教授が教授らしくすることで私語を防いでいる。
「授業中の私語や携帯メールなどは許していません。『それが嫌なら出て行け』と言います。つまみ出すために、大学院生のティーチングアシスタント2人を付けたほどです。教室は教授以外に管理できないのに、それができないのは、だらしがないんです。学部長が口出しできるのは、学生が焚き火をしたなど特別な場合です。もちろん、教授が予習をきちんとして、最先端のいい講義をするのが最も大切で、私も心がけていますよ」